蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~「国民年金」の納付5年延長について

値上げラッシュ、円安に増税と、経済的に暗い話題ばかり続くけど、今度は年金制度の改革案が浮上してきた。政府が、国民年金の納付期間を5年延長するという案を検討し始めたそうだ。


いまの制度では20歳から納付が始まり、59歳まで40年間払い続けるということになっている。それを64歳まで引き延ばして、45年間の納付期間にしようというものだ。


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会社員で厚生年金に入っているなら、建前として64歳まで雇用延長するというのがセットになっている。なので、そのまま定年まで働いて納付すればいいということなんだけど、今回の改革案は国民年金なので、影響を受けるのは自営業とか主婦の方々だよね。


年金制度は2000年に法律改正して、支給開始年齢がそれまでの60歳から65歳に引き上げられた。たぶんその頃から「納付も65歳まで」というのは既定路線だったんだと思う。


でも、それを経済的な不安が高まっている今のタイミングで発表されるとため息が出るというか、印象がよくないよね。


年金制度というのは、高齢化社会になって若者より老人が増えていったら支えられなくなってしまうというのは誰でも分かっていたこと。それを先送りして、放置してきた政府に問題があるよ。


国民健康保険も同じような行き詰まりが見えてきているよね。俺も検査で月1回は病院のお世話になっているけど、待合室は高齢者でいつも混雑している。

柔軟に対応できるシステムに!

その医療費を支えてくれているのは、いま社会で働いている現役世代。医療費は年齢が上がるほど増えてしまうのは仕方がない。同じ20年間だとしても、子供が生まれてから20歳になるまでと、60歳から80歳の間の医療費だったら高齢者のほうが何倍もかかってしまうだろうからね。


それは、みんな薄々気づいてるんだけど、自分が年を取って、病気になったときに経済的に支えてもらいたいから、いまのシステムを壊したくないという気持ちがある。でも、このままいけば健康保険制度もそのうち立ち行かなくなって、負担額を見直したりすることになると思う。


これは、もう一種の社会不安だよね。いまの年金や国保のシステムが、ずっと続くのかどうか分からないから、疑心暗鬼になって自分たちでカネを貯めて老後に備えるようになり、消費が滞る。それで景気がさらに悪くなるという悪循環だよ。


もう老人になったら、カネなんて好きなことに使ったほうがいい。


昭和生まれは家を守るというか、財産を家族や次世代に残すという考えが強かったと思うけど、これからは自分で稼いだ分は自分で使い切ってから死ぬほうがいいし、それが経済のためになる。


若い世代に支えてもらうんじゃなくて、同世代で助け合うようなシステムにできないのかな。


例えば、いま60代なら、平均寿命があとどのくらいだとか、どんな病気になりやすいかなどのデータがあるはずだから、それに基づいて保険や互助組織を作るとかね。