(画像)Harold Escalona/Shutterstock
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ロシアの敗色濃厚か…軍さえ望む!? 戦犯プーチンへの“死の裁き

日本時間15日夜遅く、ウクライナとの国境に近いポーランドに落下したミサイルがどこのものなのか慎重に見極める必要がある中、ウクライナに侵攻したロシア軍が末期状態に陥っている。


わずかな訓練を受けただけの部隊が全滅し、兵器も弾切れ状態でイランや北朝鮮に頼る始末だ。クレムリン(大統領府)周辺では、惨敗の責任をウラジーミル・プーチン大統領に押し付けようとする動きも出てきた。民間人の殺害やインフラ施設の破壊など、「戦争犯罪」に問われる事態も現実味を帯びている。


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プーチン大統領が9月21日に署名した「部分的動員令」では、深刻な兵員不足を補うために約32万人が召集された。動員から逃れようと約70万人がロシア国外に逃げ出したといわれるが、ウクライナの前線に送り込まれた動員兵の様子を見る限り、彼らの判断は正しかったようだ。


9月30日、ロシアが一方的に「併合」を宣言したウクライナ東部のルガンスク州では、動員兵の1個大隊約570人が配置されたが、直後に500人以上が戦死するなど、ほぼ全滅状態となった。動員兵らは最前線から約15キロ離れた地域で塹壕を掘るように命じられたが、シャベルは30人に1つしか与えられず、大半は手で土を掘らざるを得なかったという。そんなところにウクライナ軍の砲撃を受けては、ひとたまりもない。


訓練の時点ですでに動員兵からは不満が漏れていた。ロシア中西部では100人以上の動員兵が、上官に「支給されたのは1970年代の旧式の銃で、さびていて撃つことができない」と抗議したほか、食料や水も不足していると訴えた。

落ちてしまった士気は一向に上がらない

南西部の訓練場でも動員兵100人以上が上官を取り囲み、「月給19万5000ルーブル(約45万円)が未払いだ」と詰め寄った。慌てたプーチン大統領が同額の一時金を支払う法令に署名するなど、国家レベルで事態の収拾に追われた。

ロシア軍の犠牲者が日増しに増える中、動員は予備役にとどまらない。プーチン大統領は殺人や強盗、麻薬などの犯罪で有罪となった受刑者や前科者の召集についても、合法化する法改正に署名した。テロリストやハイジャック犯、スパイ以外の犯罪者なら、軒並み総動員される可能性がある。


戦国時代ならいざ知らず、現代の戦争で装備もないまま前線に立てば、待っているのは死しかない。しかも、まともに報酬も与えられないのではあまりに悲惨だ。


しかし、そこまでして動員兵を投入しても、ロシア軍の戦況は改善していない。ウクライナで占領地を拡大するどころか、併合した東部と南部の4州でウクライナ軍の反撃を受け、障害物を置いたり穴を掘ったりして防衛線を設置するのが精いっぱいだ。


「ウクライナも厳しい状況だが依然として軍の士気は高く、アメリカが防空システムを供与するなど西側の支援も継続している。ロシアは長期戦に持ち込み西側の支援疲れを待つしかないが、軍の士気は一向に上がらず、攻勢を強める糸口は見えてこない」(軍事ジャーナリスト)


戦争が長期化すれば、西側の経済制裁がじわじわとロシアを痛めつける。動員をめぐってロシア国民の反発は強まっており、プーチン大統領が2月24日に始めた「特別軍事作戦」が失敗に終わった場合、いよいよ責任の取り方が問題になってくる。


「プーチン大統領は『西側が2014年にウクライナで戦争を始めた』『西側の目的はロシアの弱体化だ』などと、米欧に侵攻の責任を転嫁したうえ、『軍事作戦は絶対的に不可欠で唯一可能な決断だった』と繰り返し主張しています」(同)

国際刑事裁判所も動いているが…

今年のノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体『市民自由センター』は、ウクライナへの軍事侵攻で発生したロシアの戦争犯罪を2万4000件以上も記録したとし、プーチン大統領を刑事裁判にかけることを目指している。

そもそも他国であるウクライナに武力で侵攻したこと自体が、戦争犯罪に問われるべき事案だ。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャや東部のイジュムといった都市部では、民間人へのレイプや大量虐殺(ジェノサイド)など重大犯罪が確認されている。


また、ロシア軍はウクライナのザポリージャ原子力発電所に砲撃したほか、電力施設など民間インフラへの攻撃も行い、日常的に大規模な停電や断水が続いている。11月4日、G7(先進7カ国)の外相会合は、共同声明で「民間施設への無差別攻撃は戦争犯罪に当たる」と警告を発した。


ロシアの戦争犯罪については、すでに国際刑事裁判所(ICC)が捜査を開始している。ICCは2019年11月、コンゴで反政府武装勢力を率いたボスコ・ヌタガンダ被告に対し、民間人の大量殺害やレイプ、性奴隷化などの罪で、禁錮30年を言い渡した。


ただ、ロシアはICCに加盟しておらず、現状ではプーチン大統領を逮捕することは困難だ。しかし、ロシア国内で失脚した場合は話が別で、むしろより厳しい事態になるだろう。


「鍵を握るのが、民間軍事会社『ワグネル』を創設した実業家のエフゲニー・プリゴジン氏だ。プーチン大統領と関係が近く、国内で発言力を強めている同氏だが、戦況が不利になれば動員兵の供給に携わっている自身への批判も強まってくる。大統領を失脚させて引き渡すことで、自らの保身とロシアの生き残りを図ることは十分にあり得るシナリオだ」(国際アナリスト)


プーチン大統領に「死の裁き」が下る日が迫っているのか。