
川上哲治「ボールが止まって見えた」~心に響くトップアスリートの肉声『日本スポーツ名言録』――第27回
戦前、戦後を通じて巨人軍の中心選手として人気を博し、卓越した打撃技術と求道的な姿勢から〝打撃の神様〟と呼ばれた川上哲治。監督としては栄光の巨人軍V9を成し遂げた名将として、その功績は球史に燦然と輝き続ける。
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プロ野球界の天才といえばイチローや大谷翔平の名前が出てくるが、その上を行くのが〝打撃の神様〟川上哲治だ。いくら天才でもしょせんは人間。天上人とはレベルが違う。
とはいえ、川上が語ったとされる「ボールが止まって見えた」という言葉を知っていても、現役時代については詳しく知らないという人もいるだろう。
まず成績を見ると、通算18年に及ぶ現役生活のうち首位打者が5回(歴代トップは張本勲とイチローの7回)、シーズン最多安打が6回(歴代トップは長嶋茂雄の10回)。生涯安打数は2351で、日本で初めて2000本安打を達成した選手でもある。
ちなみに、赤バットの川上と並ぶ戦後プロ野球界のスター選手、青バットの大下弘は現役14年で1667安打。〝物干し竿〟の藤村富美男は現役17年で1694安打だった。通算本塁打181本は特に際立った数字ではないが、球の質が悪く飛ばない時代であったことを思えば仕方のないところか。
驚くべきは三振の少なさで、1951年のシーズンは424打席に対し三振はわずか6回。70打席に1回しか三振をしなかったことになる。現代とは投手のレベル差もあるので単純比較はできないが、川上が高い打撃技術を備えていたことは間違いない。
時間がたつのも忘れるくらい集中した
川上はポテンヒットが多かったことから〝テキサスの哲〟とも呼ばれていたが(ポテンヒットを「テキサスリーガーズヒット」と呼んでいた)、これも優れたバットコントロールのたまものだった。このニックネームは晩年に力が衰えてからのものと思われがちだが、実はそれだけではない。兵務を経て巨人に復帰した当初には、なんとか小手先の技でポテンヒットを放っていた時期があり、「心の中では本物になりたいという欲求と、そうなれない不安が葛藤していた」と川上は当時を振り返っている。
そうは言っても打球の鋭さから〝弾丸ライナー〟と称されたのも川上が最初であり、その打撃力に疑いの余地はない。
戦地に赴いたことを「実弾の下を潜り抜けるような体験をすれば、野球ごときの勝負においては、絶対の自信を持てるようになると考えた」と話したように、野球に対する求道者のごとき気質から、川上が自分自身を低く見積もっていた部分はあっただろう。
本格的に打撃開眼となったのは1950年のことだった。開幕から極度のスランプに見舞われた川上は、シーズンも半ばとなった7月初旬、休日に多摩川グラウンドで特打ちを行った。
そのときのことを川上は、以下のように語っている。
「時間がたつのも忘れるくらい集中していたら、ボールがミートポイントで一瞬止まったように見えた。その瞬間に『これだ』という心境になり、それからはすべてのボールが同じ空間で止まる、それを打つ、『これだ』と感じることの繰り返し。打撃投手の『もう勘弁してください』という言葉でハッとわれに返ると、自分の中に自信のような気持ちが芽生えていた」
長年の“理想”典型的なダウンスイング
今でいう「ゾーン状態」を体得したということだろう。現役時代から禅寺での修行に取り組んできた川上が語ると、何かしら精神世界の話のようにも感じられるが、要は「集中状態を完全に自分のものにした」ということになるだろう。その翌年には打率3割7分7厘で首位打者を獲得し、以後はスランプらしいスランプもなく、安定して好成績を残すようになった。
そんな川上の打撃フォームは典型的なダウンスイングで、これは長年、日本球界において「理想」とされてきた。長嶋や王貞治や落合博満も、多少の差はあれども川上の影響下にあったと言えよう。
だが、ここ数年はメジャーリーグのフライボール革命(フライを打ったほうがヒットの確率が上がるとする理論)の影響から、大谷も最年少三冠王の村上宗隆もアッパースイングを取り入れている。
また、川上が監督時代にV9を達成した影響で、長きにわたって球界の盟主と呼ばれてきた巨人軍も、今や下位低迷が珍しいことではなくなった。
令和になってようやく日本のプロ野球界は、「川上時代」に別れを告げたのかもしれない。
《文・脇本深八》
瀬古利彦 PROFILE●1920年3月23日生まれ〜2013年10月28日没。熊本県出身。熊本工から1938年に巨人軍入団。不動の4番打者として活躍した後は監督としても抜群の成績を残し、日本に近代野球の基礎を築いた。
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