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『鉄道会社 データが警告する未来図』著者:鐵坊主(てつぼうず)~話題の1冊☆著者インタビュー

『鉄道会社 データが警告する未来図』河出書房新社

『鉄道会社 データが警告する未来図』河出書房新社/979円

鐵坊主(てつぼうず)
1968年生まれ。鉄道解説系ユーチューバー。鉄道アナリスト。2020年11月にYouTubeチャンネルを開設。鉄道を中心とする日本の地域交通のあり方について鋭い視点で分析・解説し、人気を集めている。

――JR北海道は全線区が赤字です。将来はどうなるのでしょうか?

鐵坊主 道民の大半は車移動が中心で、収支だけで考えれば、北海道新幹線と札幌都市圏以外の路線は維持できません。

しかし、残っている路線は北海道の骨格とも言えるものばかりで、これ以上の廃止は現実的ではなく、現在の路線網をどのように維持していくかが課題になるでしょう。

JR北海道は札幌駅ビルの開発、周辺での不動産事業の展開など、非鉄道事業の収益拡大が必須であり、国や道庁にも大きな関与が求められますね。

――新幹線の高速化が進んでいます。次世代の新幹線はどうなっていくのでしょうか?

鐵坊主 JR東日本はALFA-X(アルファエックス)という実験車両を用い、次世代車両では最高速度を時速360キロへと引き上げることを視野に入れています。空路の羽田・成田〜新千歳と競合するため、ここで一定のシェアを取るためにも高速化は必須です。また、四国新幹線などの話もありますが、人口が減少していく中、多額の建設費をかけてまで本当に新幹線が必要なのか? シビアな判断が求められていくでしょうね。

確実に維持できない路線

――リニア中央新幹線の開業が大幅に遅れる見通しになっています。何が問題なのでしょうか?

鐵坊主 トンネル工事で発生した湧水は大井川の水源であることから、静岡県は全量戻すことを求めていますが難しいです。国土交通省の有識者会議では、大井川の水量は維持されるとの中間報告が示されましたが、静岡県は中間報告書を100%評価できないとして、なかなか溝は埋まりません。さまざまな意見がメディアをにぎわせ、事態をますます悪化させています。国交省、静岡県、JR東海の3者は情報を分かりやすく伝えることから始めるべきではないでしょうか。

――日本の鉄道の未来はどうなると思いますか?

鐵坊主 鉄道の優位性は大量輸送、定時性、速達性です。ただ、現在は人口減少による地方部での大量輸送のメリット、高速道路網の拡大による速達性のメリットが薄れてきています。今後、維持できない路線が出てくるのは止むを得ないでしょう。

一方で、滋賀県のように〝交通税〟を課して、鉄道を維持しようとする動きも出てきており、国鉄分割民営化から、再びインフラとして公営化への道をたどっています。

鉄道が町づくりのパーツとして、必要とあれば維持、なければ廃止と、沿線自治体にその決断が求められるようになるでしょう。

(聞き手/程原ケン)

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