(画像)Zbitnev/Shutterstock
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北朝鮮“1日20発超”ミサイル乱発は米韓演習への恐怖が原因!? 7回目“核実験”も強行か…

北朝鮮が荒れ狂っている。11月2日には短距離弾道ミサイル(SRBM)など、少なくとも23発の各種ミサイルを発射したが、うち1発は海上の軍事境界線である北方限界線(NLL)を越え、韓国の領海付近に着弾した。南北分断後にミサイルがNLLを越えたのは、これが初めてとなる。


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翌3日には弾道ミサイル計6発を日本海に向けて発射し、うち1発は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の可能性が指摘されている。このICBMについては宮城、山形、新潟の3県でJアラート(全国瞬時警報システム)を鳴り響かせたが、切り離し後に失速して日本列島上空を通過しなかった。


なぜ北朝鮮は、国民がコロナ禍と飢えに苦しむ中、身の丈に合わない巨費を投じて挑発を繰り返すのか。北朝鮮情勢に詳しい専門家は、10月31日から当初5日間の日程で始まった大規模な米韓合同軍事演習『ビジラント・ストーム』に対する恐怖からだと指摘する。


「軍のトップでもある朴正天書記は、ビジラント・ストームについて『攻撃型の戦争演習』だと非難しました。そのうえで、最近の北朝鮮によるミサイル発射を『侵略訓練への正当な防衛措置』と主張しています。不気味なのは演習の延長決定に際して、『持続的挑発には持続的対応が伴う。最後まで超強力に応じる』と述べ、さらなる軍事挑発を宣言したことです」(軍事アナリスト)

演習映像で現れた『B1B』戦略爆撃機

最大規模で開催されたビジラント・ストームにおいて、米韓空軍はそのまま実戦に移行できる布陣を敷いた。演習には最新鋭の戦闘機のほか、空中給油機や高高度偵察機、電子戦機など用途別の軍用機がズラリと登場。これに参加した240機があれば、北朝鮮の軍事基地や労働党庁舎など重要拠点を制圧できる。

5日に公開された演習映像で目を引いたのは、別名〝死の白鳥〟と呼ばれる米空軍の『B1B』戦略爆撃機だ。音速を超えるマッハ1.2のスピードを誇り、米領グアムから朝鮮半島までわずか2時間で到達可能。敵レーダーに探知されにくいステルス機能を併せ持ち、瞬く間に敵陣に侵入して大量の爆弾を投下する。


「北朝鮮の地下施設を破壊する地中貫通爆弾を装備できるため、金正恩総書記が最も恐れる爆撃機と呼ばれています」(軍事ライター)


つまり、米軍によるB1Bの投入には〝核実験をやれば斬首作戦を実行する〟という警告の意味が含まれている。また、韓国の尹錫悦政権が空軍演習を増やしているのは、北朝鮮の脆弱な防空体制に対し、圧倒的な差を見せつけて戦意を削ぐためだと考えられる。


「北朝鮮には米韓空軍に対抗する力はありません。戦闘機は〝博物館もの〟と揶揄されるほど老朽化が激しく、燃料不足から年間の飛行訓練時間は米韓の1割にも満たない20時間程度。旧ソ連から購入した地対空ミサイルを改良して警戒に充てていますが、レーダー類は電力不足から十分に稼働できない状況です」(同)

米国も強くけん制…

そんな体たらくの北朝鮮が本当に7回目の核実験をできるのか疑問だが、複数の情報関係筋の証言をまとめると、すでに豊渓里にある核実験場では準備が完了しているとみられる。

「現段階でも正恩氏が命令を下せば、ただちに核実験を実施できます。ただ、過去6回の実験では、核実験場に技術者や軍人、政治家などが参観するための臨時施設を造ったり、周囲の警備を強化したりする兆候が見られたが、今回はまだその段階に至っていません」(国際ジャーナリスト)


過去6回の核実験は、中国の制止を振り切って強行してきたが、もしかすると今回も中国から止められ、それに従っている可能性もある。そうした一方で、すでに中国、ロシアに核実験の実施を伝えたという観測も流れている。


北朝鮮は今後も韓国に対して、戦術核を搭載できる多種多様なミサイルで挑発を繰り返すだろう。日本に対しては太平洋海域側への奇襲攻撃を想定し、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の発射に踏み切るかもしれない。


「具体的な軍事行動を起こさなくても、反北朝鮮の度合いを強める尹政権を打倒するため、韓国に潜む工作員に謀略活動を指示することが考えられます。梨泰院圧死事故を利用して、批判の声を高めることも行うでしょう」(外交関係者)


10月28日、米国防総省は新たな核戦略の指針となる『核態勢の見直し』を公表したが、その中には「米国またはその同盟、パートナーに対する北朝鮮のいかなる核攻撃も容認せず、これは金正恩政権の〝終末〟を意味する」「金正恩政権が核兵器を使用しても、生き残れるシナリオはない」と、強くけん制した文言が盛り込まれている。


ロシアによるウクライナ侵攻や中国と台湾の緊張激化、新型コロナウイルスへの対応に世界が気を取られている隙に、北朝鮮は虎視眈々と核・ミサイル開発を進めているが、こうした脅威の常態化を決して許してはならない。