
『宮松と山下』
監督・脚本・編集/関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦
出演/香川照之、津田寛治、尾美としのり、野波麻帆、大鶴義丹、諏訪太朗、尾上寛之、黒田大輔、中越典子
配給/ビターズ・エンド
キョンキョンの「答えは15秒後、ジャジャジャン」などアイデアに溢れた名作CMや、NHKの『おかあさんといっしょ』から生まれて大ヒットした歌『だんご三兄弟』を世に出した元電通のプランナーで今は大学教授の佐藤雅彦さん。
彼をはじめ、映像のプロが集結して監督・脚本を担当した本作。3人共同監督って珍しいのでは。自分は聞いたことがありません。
数秒に命を懸けるCMづくりで培った「新しい手法が生む新しい映像体験」がテーマということで、記憶を失った男がエキストラ俳優として名もなき人物を演じ、公私ともに匿名で生きる人生を、誰よりも濃い存在感を発揮する怪優、香川照之が主演します。
映像の中で確かに出演しているけれど、見る人の記憶には決して残らないエキストラ俳優だけで食えるはずもなく、ロープウエーの管理責任者としても働いています。この仕事のチョイスがなんとも絶妙です。昭和の時代から今もなお、誰かが働いているはずですが、普段は気にも留められない仕事。自動化するにも経費はかけられない、いつかはなくなってしまうであろうレトロな働き口。さすがの目の付けどころだなぁと。
“代え難い存在”ということ
そして、どこまでがエキストラ演技でどこからが実生活か、見ている方は分からない謎めいた演出が続きます。上演時間87分と、今時の長編映画にしてはすっきり短く感じる尺なので、星新一のショートショートのようだとも思いました。なので最後にもう1回どんでん返しがあるのではと期待していたら、意外やあっさり終わってしまい、星を1つ減らした次第です。
さて、主演の香川照之。映画に歌舞伎にCMに司会者にと八面六臂の活躍でしたが、例の銀座セクハラ騒動で叩かれ、次々と降板に追い込まれたのは記憶に新しいところ。自分は銀座とのご縁なぞ皆無。政治家や経済界の重鎮たちが豪遊する夜の蝶の世界など、正直どうなってもいいと思うクチです。こんなことで消されてしまうのだなと思っていたら、予想以上に早く復活してきました。12月の歌舞伎座公演に「市川中車」として出演、舞台から活動開始するようです。
余人をもって代え難いんでしょうね、香川照之は。我々虫好きにとって、演技より何より、NHKの教養番組『昆虫すごいぜ!』などでの昆虫スポークスマンぶりが「余人をもって代え難い」働きでした。最近では「無用な殺生だ」との批判もあり、肩身が狭くなっていた昆虫マニア界を、あのテンションで応援するのは難しくとも、昆虫愛では自分も負けていません。「余人」のご用命がございましたら是非に!
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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