プロ野球はストーブリーグに突入し、今季FA権を取得した選手たちの動向も決まりつつある。そんな中、巨人は広島から長野久義を無償で獲得したと発表。「人情トレード」と報じられているが、その裏で各メディアが報じない大きな動きがあったようだ…。

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巨人・原辰徳監督の「後継者問題」が、阿部慎之助ヘッドコーチで一本化したという。広島カープの長野久義「呼び戻しトレード」は、その一環。習志野高の同級生「阿部パパ」と掛布雅之氏が〝私的顧問団〟となり、政権移行が着々と進む。次は「メジャーリーガー澤村拓一」復帰か――。

4年前にフリーエージェント（FA）で巨人入りした丸佳浩の人的補償で広島に移籍した長野久義外野手が無償トレードで古巣に戻った。スポーツ紙は「彼は巨人に入りたくて二度もドラフト（指名）を拒否している。『GIANTS』のユニホームで残された現役生活を全うさせてあげたい」というカープの〝温情〟を強調。美談調に報じているが、見逃せないのが両球団の間に入って〝橋渡し役〟を演じた人物だ。

スポーツ紙デスクが舞台裏を明かす。

「話の取り次ぎをする仲立ちは利害関係のない人物じゃないと務まらない。今回、骨を折ったのが、阪神の特別職『HANSHIN LEGEND TELLER』（ハンシン・レジェンド・テラー）の掛布雅之氏。カープの新監督に就いた新井貴浩氏は阪神での現役時代、掛布氏が後ろ盾になって支えられた。その縁で長野の巨人復帰を働きかけ、律義な新井監督が球団に掛け合って実現。これが、漏れ伝わる〝真相〟だ」

長野復帰にも一役買った

巨人－広島間のトレードに「阪神・掛布」が登場すると、「えっ」と思われるかもしれないが、実は掛布氏にはもう一つの顔がある。

巨人の次期監督就任が決定的となりつつある阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチの「少年時代からの師匠」。同郷の掛布氏と阿部家との間には、球団の垣根を越えた特別な絆があるのだ。

阿部ヘッドの父・東司さん（阿部パパ）と掛布氏は、千葉・習志野高の同級生。野球部に所属した2人は「3番掛布、4番阿部」で1972年夏の甲子園に出場した。その後、阿部パパは中央大学から実業団の電電東京（現NTT東日本）に進み、捕手として活躍。掛布氏は習志野高からドラフト6位で阪神入りし、ミスタータイガースとなったのはご存じの通りだ。

「現在も両者の親交は続いています。阿部パパが息子（阿部ヘッド）に野球の英才教育を始めた際、常にモデルとしたのが掛布氏でした。右投げ、左打ちも、彼への憧れがあったからでしょう」（スポーツ紙・阪神担当）

今季終盤、2年連続で日本シリーズ出場を逃した原辰徳監督は球団に辞任を申し出ていたという。慰留されて続投を決意したのは、契約に「後任育成」の条項があり、来季1年を「阿部内閣発足の準備期間に充てる」ことで合意したからだという。

「当然、阿部ヘッドも情報を共有しており、阿部パパと掛布氏が監督就任後の私的顧問になるだろう。真っ先に着手したのが、阿部コーチが現役時代に毎年一緒にグアムで自主トレを実施するなど親交の深い長野の呼び戻し。チームリーダー役と打線強化が狙いだが、来オフは打撃コーチ兼任を想定しているという。そこで掛布氏が密かにキューピッド役を買って出たのだろう」（前出・デスク）

このオフ、巨人では「デーブ」の愛称で知られる大久保博元氏が打撃コーチに就任した。原監督の抜擢とされるが、推挙したのは阿部ヘッドという。

『MLB澤村』の呼び戻し

西武と巨人で活躍した大久保コーチの巨人退団は、1995年オフ。2000年のドラフト1位で入団した阿部ヘッドとは入れ違いだが、阿部パパの中大時代の後輩に当たる、元巨人投手の香坂英典氏（当時広報）が取り持つ縁で、家族ぐるみの付き合い。阿部パパは大久保コーチが東京・新橋で経営する居酒屋『内蔵でーぶ』も度々訪れ、交流を深めているという。

「今回の打撃コーチ就任は、阿部パパの助言が大きい。慎之助（阿部ヘッド）はミスをした選手に罰走を命じるなど、どちらかというと体育会気質。巧みな話術で場を和らげるデーブがそばにいれば、波風は立たないだろうと。慎之助はヘッドとバッテリーコーチを兼ねるが、監督に就いた暁には、バッテリー部門をデーブに委ね、打撃部門を長野に託すのではないか」（巨人OBの解説者）

そんな巨人内では、もう1人の「大物復帰」がささやかれている。これまた阿部ヘッドと同様に2010年にドラ1入団した澤村拓一投手だ。一昨年9月にロッテ・香月一也と交換トレードに出され、年俸差1億4750万円の〝格差婚〟で事実上の三行半といわれた。

澤村はこの屈辱をバネにロッテで復活を遂げると、2021年2月に海外FA権を行使してメジャーリーグ（MLB）のボストン・レッドソックスと2年契約を締結。その後、今年9月に自由契約となったため、日本球界復帰の可能性が浮上している。

「原監督はバージョンアップした澤村を呼び戻したいに違いないが、人的補償で移籍した長野とは事情が異なる。しかし、後輩を思う慎之助の強い要望とあれば、話は別。移籍話は進むだろうし、一民間人の阿部パパの仲介なら何も問題はない」（前出・解説者）

原監督が描く有終とは、「日本一奪回」を花道に阿部ヘッドにバトンをつなぐこと。1年前、「候補者は6人（阿部、川相昌弘、元木大介、桑田真澄、二岡智宏、駒田徳広）いる」と話した原監督だが、後継者は「1人」に絞られた。