企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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“入国緩和”で訪日客激増“円安”で爆買い復活〜企業経済深層レポート

10月の大幅な入国緩和を機に日本への外国人観光客が急増し、全国各地で爆買いが復活しつつある。と同時に不動産の日本買いも加速している。具体的にどんな現象が起きているのか。


10月半ば、東京・新宿で買い物中の30代と思しき米国人カップルに何を購入したか聞くと、こう答えた。


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「ブランドのダウンジャケットをペアで購入しました。1着1万8000円。アメリカなら倍はします」


食事にも話が及ぶ。食べたのはランチステーキ。パンとスープ、サラダ付きで1人2500円ほど。これがアメリカならば、1人で1万円近くになるという。


「最初はタイ周辺を旅行するつもりでしたが、日本の円安を聞き、急遽行き先を変更しました。安く買い物ができる上に、温泉付きの宿もVIP待遇で1泊1人2万円くらい。素晴らしい旅になっています」(同)


法務省の統計によれば、入国緩和前の9月の時点で、日本を訪れた外国人は韓国の4万2690人を筆頭に、ベトナム3万3234人など、1カ月の入国者総数は約25万人にも及ぶ。10月11日からは入国者制限の上限が撤廃され、さらなる上昇が見込まれている。


観光業関係者が言う。


「昨年9月と比べて、10倍近い外国人が入国しています。観光庁によれば、日本への入国希望者の上位5カ国は韓国、タイ、米国、マレーシア、豪州。うち3分の1近くはこの円安の波に乗り、日本に行き先を変更した客や買い物目当ての客と見られています」

日本でブランド品買いが主流に

それを裏付けるのが為替レートだ。コロナ禍前の2019年10月と、今年10月を比較してみると歴然だ。

金融関係者が解説する。


「日本円は米ドルに対して約4割も下落し、戻る気配はありません。人民元と台湾ドルに対しても3割超安く、韓国のウォンに対しても1割超安い。とにかく円の価値は東南アジア各国の通貨よりも断然低い」


日本を訪れた爆買い客がナイキやアディダスなどの海外メーカー品を購入していくのもそのためだ。他の国よりも2〜3割安く買えてしまうのだ。


最新のiPhone 14もターゲットになっている。128GBの最安機種は、海外では20万円以上する国もあるが、日本でなら12万円弱。転売目的の「お土産購入」もあり得るだろう。


タイ人が日本を訪れる際、必ずアクセスする訪日旅行情報サイト『Chill Chill Japan』によれば、「日本に行って何を購入したいか」というアンケートに対し、コロナ前の18年は「菓子」「食料品」「スキンケア化粧品」がトップ3で、圏外には「100円ショップ」の商品やカプセルトイなどが並んだ。


それがコロナ禍を経て、現在は「200万円以上の高級腕時計」などブランド品に変わっているのだという。


「日本で約200万円で買える高級腕時計が、海外では300〜400万円になります。時計1本で旅行代金プラス儲けまで出てしまう。台湾人・香港人向けの日本観光情報サイト関係者によれば、台湾人の間では日本酒やシャインマスカットなどの高級フルーツが人気で、爆買いされているそう」(同)

そのターゲットはリゾート地にも

さらに新たな爆買いも起きつつある。不動産だ。

円安の影響で日本の物件を探す外国人は、今年3月以降、約3倍にも増加したという。


不動産関係者が語る。


「不動産の爆買いは、円安の兆しが見え始めた今年2月あたりから活発化しています。西武ホールディングスも、子会社のプリンスホテルが国内に所有する苗場プリンスホテルやゴルフ場など31施設をシンガポールの政府系投資ファンドGICに約1500億円で売却しました」


加速する円安の影響で、日本の不動産価格は海外と比較しても3分の1〜5分の1の大バーゲンセール状態なのだという。


不動産鑑定士が言う。


「東京の高級住宅地、白金地域などのタワーマンションは、広さ200平方メートル前後だと5億円を超えるものもあります。同様のタイプが香港では15億円前後のため、『5億なら安い』と外国人からの問い合わせがひっきりなしと聞きます」


不動産の爆買いは、京都や大阪などでも活発だという。


「大阪は2025年の万博とカジノ都市候補で注目され、1棟10億円前後の新築マンションも投資目的で買われています。京都の味のある建築、町家なども中国人が爆買いしている」(同)


リゾート地も爆買いのターゲットだ。経営コンサルタントが指摘する。


「長崎県のハウステンボスが香港の投資会社に666億円で売却されたように、リゾート地も続々と海外資本による爆買いが進んでいます。雪質の良いスキー場として知られる新潟県の赤倉温泉などは、宿泊施設の4〜5軒に1軒は外国人が経営している状況です。また北海道のスキーリゾート地ニセコでは、海外資本によって購入された土地に、1泊300万円以上もするコンドミニアムが建てられ、話題になりました。北海道から沖縄まで爆買いが目白押しです」


一方的な円安が続き、海外資本に食い荒らされた末に、未来の子供たちには一体何が残されるのか…?