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『山は登ってみなけりゃ分からない』著者:石丸謙二郎~話題の1冊☆著者インタビュー

『山は登ってみなけりゃ分からない』敬文舎/本体価格1500円
『山は登ってみなけりゃ分からない』敬文舎/本体価格1500円

『山は登ってみなけりゃ分からない』敬文舎/本体価格1500円
石丸謙二郎(いしまる・けんじろう)
1953年大分県生まれ。日本大学藝術学部演劇学科中退。つかこうへい事務所から、77年に舞台『いつも心に太陽を』でデビュー。87年から『世界の車窓から』(テレビ朝日系)のナレーションを務める。

――毎年30座前後は山に登るといいます。石丸さんが登山を始めたきっかけはなんだったのですか?

石丸 登山は子供の頃のターザンごっこが原点になっています。土日になると水筒とオニギリを持って、大分県の裏山に出掛けました。他の食料は現地調達で、野イチゴやグミ、山芋などを採って食べましたね。学校の先生から「将来何になりたい?」と質問され、「ターザンになりたい」と答え、叱られた思い出があります(笑)。大学入学で東京に出て来てからは、アルプスや谷川岳、八ヶ岳などに頻繁に登りに行くようになりましたが、21歳の時に、役者の道を貫くためにすべての山道具をしまい込み、山登りを封印しました。

しかし、40歳半ば頃から登山熱がふつふつと湧き上がり、再び山に登り始めるようになりました。若い頃は単独で、速く、高く、遠くへをただ追求していましたが、年齢を重ねてからの登山は、ゆっくり、みんなで登るという楽しみ方に変わりましたね。

――3年前からNHKラジオで『石丸謙二郎の山カフェ』という番組を始められましたね。

石丸 四季の豊かな日本の山の素晴らしさを伝えたくて、ラジオ番組を始めたのですが、当初は「映像もないのに、ラジオで山の話なんかして誰が聞くの?」と言われました。しかし、映像よりも音の世界のほうが、むしろ山好きの方たちに溶け込んだようで、私自身が毎週土曜の朝が楽しみになっています。

「本書の挿絵は自分で墨絵で描いています」

――本のタイトルの意味はなんですか?

石丸 山とは不思議なもので、登っていると、遠くから眺めている様子からは想像できない姿を見せてくれるんです。例えば、以前は浅間山を遠くから見て、おまんじゅうのような山だと思い込んでいました。しかし、登ってみたらどうでしょう。断崖あり、絶壁ありで、おまんじゅうとはまったく違うじゃないですか。外輪山が二重に取り囲んでおり、特に秋の紅葉の季節は、素晴らしい美しさです。これも登ってみて初めて分かったことでした。

――本書の挿絵はご自分で描かれたそうですね。

石丸 墨絵で描いています。白黒の世界が想像力をくすぐるんですよね。山の中で墨をすり、筆で絵を描くんです。また、新たな山の楽しみも見つけました。ピアノが設置してある山小屋がいくつかあるんですが、そこに泊まり、2年前に始めたピアノの曲を弾くんです。曲はドビュッシーの『月の光』。山の楽しみは本当に奥が深いです。やっぱり「山は登ってみなけりゃ分からない」です。

(聞き手/程原ケン)