蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~「花束投げ捨て事件」炎上で得をしたのは…!?

ボクシング元世界チャンピオンのフロイド・メイウェザーと総合格闘家の朝倉未来が、エキシビションマッチを行った。その試合直前のリング上でメイウェザーに渡す花束を投げ捨てるという、「ごぼうの党」の奥野卓志代表が起こした騒動の波紋が広がり続けている。


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いままでの経緯を整理すると、まず9月25日のメイウェザーVS未来の試合で奥野氏による「花束投げ捨て事件」が起こった。このときメイウェザーは特にうろたえず、無言で花束を拾って試合に臨んだが、観客やPPV視聴者は騒然。「国辱行為」という意見まで飛び交った。


試合はメイウェザーがTKO勝利を飾ったんだけど、注目は花束投げ捨て問題に集中。主催したRIZIN代表の榊原信行CEOは「品性下劣な人間をリングに上げてしまった」と謝罪。後に行われた記者会見ではこの件について改めて土下座までして、さらに物議を醸すこととなった。


奥野氏は自身のYouTubeなどで釈明しつつ、花束を投げ捨てた理由は「メイウェザーの態度が以前から気に食わなかったため」と発言。さらに2018年12月31日に行われたメイウェザーVS那須川天心のエキシビションマッチを引き合いに出し、メイウェザー側からの一方的な訴えで試合直前に那須川天心のバンテージを巻き直させた運営側のRIZINも糾弾している。


この騒動で1つ言えるのは、いまは完全に炎上マーケティングの時代になったということ。批判でも、悪評でも、とにかく話題になればいい。

炎上をそれぞれがどう生かすのか

そもそも、俺はこのメイウェザーVS未来が決まった時から、「どっちが勝つか」というよりも、これは未来くんが絶対に損はしないマッチメイクだと思っていた。勝ったら選手としての格が上がるし、負けてもエキシビションマッチだから傷つかない。どちらにせよ、自分のYouTubeの視聴者数が増えるから、ビジネス的には得しかない。

それを壊したのが奥野氏なんだけど、彼には注目が集まったし、ヒカルくんや前田日明さんのYouTubeに出演するなど、すっかり時の人になった。この花束贈呈の権利は、NFTオークションに420万円を出して獲得したそうだけど、その宣伝効果は払ったカネ以上のものになったと思う。


俺もこの件で奥野氏を知って、彼のYouTubeを見たけど、日本人の地位向上を訴えたりしていた。それに賛同できるかどうかは別にして、奥野氏には訴えたいことがあり、そのために今回の騒動を起こしたということが伝わってきた。


メイウェザーも負けていない。投げ捨ての瞬間は何もしなかったけど、アメリカに帰国してから「あの行為は人種差別だ」とメディアに訴えている。


この三つ巴の話題合戦に待ったをかけたのが、榊原さんの土下座だよ。賛否両論あるけどインパクトはあったから、これも炎上した。


この一連の騒動で、最も振り回されているのがファンだろうね。それぞれに文句を言ったり、ネットで意見を書き込んだりしてるけど、炎上の火種か、薪になってるだけだから。


正義か悪かは関係ない。とにかく視聴者を自分たちのメディアに引き込めば儲かるという時代に突入した、ということだろうね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。