北朝鮮・金正恩のミサイル乱射…背景に「守りの弱さ」と「国民の飢餓」への不安?
9月25日以降、北朝鮮は前例がない異常なペースで弾道ミサイルを発射しており、今まさに朝鮮半島で不測の有事が起きているかのようだ。しかも北朝鮮は10月10日、一連のミサイル発射について韓国への核攻撃のシミュレーションだったと公表した。
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この露骨な挑発に対して、韓国政府は「北が(2018年の)9・19軍事合意を破ったことはもちろん、弾道ミサイル発射で国連安保理(安全保障理事会)決議まで同時に違反した」と厳重警告。北朝鮮の反論は「南側の砲射撃に対応した措置」で、南北は売り言葉に買い言葉の応酬になっている。
しかし、核兵器による米朝開戦は決して絵空事ではない。北朝鮮は2016年に有事の際の攻撃目標を発表しているのだ。
「それによると、第1目標が韓国大統領府と在韓米軍基地で、第2が横須賀や沖縄にある在日米軍基地、そしてグアム、ハワイ、さらには米国本土と続きます」(軍事ジャーナリスト)
加えて北朝鮮は、ロシアによるウクライナ侵略が泥沼化していることで、新たな方針を示したという。
「金正恩総書記の実妹である金与正党副部長は、4月に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)を掌握した後、『戦闘初期に相手の戦意を喪失させ、長期戦を防ぐ』との戦術を示唆しました。これはウクライナの戦意を喪失させることができず、長期戦を強いられているロシアから教訓を得たものです。中途半端な攻撃ではロシアの二の舞いになりかねない。強力な先制攻撃、つまり核兵器の使用にためらいなく踏み切るということです」(同)
ミサイル開発は見事だが実戦となると…
北朝鮮のミサイル開発は格段の進歩を遂げており、日韓の専門家は「北朝鮮の変則軌道ミサイルや極超音速ミサイルにより、日本の防衛網は破綻した」との見解で一致している。10月4日に日本列島の上空を5年ぶりに通過した弾道ミサイルについては、北朝鮮が「新型の地対地中距離弾道ミサイル(IRBM)」と発表している。防衛省によると、いきなり青森県を飛び越えて約4600キロを飛行し、これまでの北朝鮮の弾道ミサイルの中で、最長の飛距離を記録したという。
「こうした事実から核・ミサイル開発を主導する北朝鮮の国防科学院が、かなりの自信を持って新型ミサイルを発射したことがうかがえます。しかも、このIRBMには、バーニアエンジン(小型補助エンジン)が確認できませんでした。補助なしで最長の飛距離を記録したわけですから、エンジンの性能は格段に上がっています」(軍事ライター)
ただし、北朝鮮が8日に実施した大規模な「航空攻撃総合訓練」では、通常兵器があまりにお粗末であることが露呈している。
「戦闘機150機が出撃すると喧伝したのはいいが、旧型のミグ機や武装していない練習機までかき集めて、ようやく40〜50機ほどを飛ばしたにすぎなかった。また、原油不足の煽りで訓練をほとんどしていないため、編隊飛行もできない。もし実戦なら数分で全機撃墜されたでしょう」(同)
守りの弱さと国民の飢餓
また、北朝鮮は戦術核運用部隊の「訓練」として、弾道ミサイル発射に関する写真を公開している。しかし、そのうち日本海上の島を打撃する写真については、1月のミサイル試射実験と同じものを使い回している可能性が高い。国内外に向けて自軍を強大に見せるため、かなり無理をしていることが分かる。「正恩氏の指示で、党中央委員会が企業や官公庁、地方政府などに対して防空壕の抜き打ち検査を実施したところ、ほとんどの防空壕が使用できないことが判明しました。報告を受けた正恩氏は激怒し、早急に修理するよう指示した結果、大量動員された作業員が食事抜きで働かされたようです」(北朝鮮ウオッチャー)
攻めには強いが、守りはずいぶんとお粗末なようだ。
「正恩氏は焦っているはずです。ミサイルの性能が向上したといっても、21年1月の党大会で『国防発展5カ年計画』を発表してから、もうすぐ2年が経過する。あと3年で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の命中精度を上げ、核爆弾の小型化を実現するのは容易ではありません」(同)
後ろ盾となっているロシアがウクライナ侵攻で苦戦している現実も、北朝鮮の焦りを増幅させている。自国の軍事力だけで米国に対抗できるよう、新型原子力潜水艦、無人攻撃兵器、軍事偵察衛星などを実用化させなければならない。
正恩氏の焦りは、国民に充満する飢餓への不安に対処できないことにもある。
「朝鮮中央テレビは10日、新たに完成した大規模農場を視察に訪れた正恩氏が、野菜を手に笑顔を見せ、建設担当者らと記念撮影している映像を流しました。また、朝鮮中央通信は12日、戦術核運用部隊による長距離戦略巡航ミサイル試射の際、正恩氏が現地指導を行ったと報じています」(国際ジャーナリスト)
正恩氏の右手には核ミサイル、左手には野菜…。北朝鮮に未来はない。
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