「鹿児島県の畜産最大手企業と合弁会社を設立し、生産者と直接取引する仕組みを構築したことで、品質のいい和牛が安定的に届くようになった。そのため『ワタミの肉は安くてうまい』と評判になり、特に看板メニューの『ワタミカルビ』は、牛1頭から1%しか取れない希少部位を使いながらも格安で、圧倒的人気だという」(同)
好調なのはワタミだけではない。07年の創業から現在は全国240店舗を展開する『焼肉きんぐ』も同様だ。同チェーンを運営するのは「物語コーポレーション」(愛知県豊橋市)だが、緊急事態宣言に伴う営業自粛などにより、昨年4月の売上高は対前年同月比27.0%まで落ち込んだ。しかし、そこから逆襲に転じ、7月には同110.1%と驚異的な数字を叩き出している。
『焼肉きんぐ』がV字回復できたのは、やはりワタミ同様、コロナ対策がピタリとはまったからだ。まず、同チェーンは郊外ロードサイド型の店舗が多く、3密を避けたい顧客に歓迎された。また、注文がタッチパネル方式で、人との接触回避も好まれた。無煙ロースターと換気装置もフル回転で稼働している。
「万全のコロナ対策に加え、興味を惹くメニューのアイデア、肉質の向上がさらに客足を呼び込んだ。長さ30センチもある壺漬け一本ハラミや、100分で58品目食べ放題の『きんぐコース』が人気です」(経済誌記者)
“巣ごもり”に相いれないのが焼肉屋の強み!?
いま話題の1人焼肉のチェーンを展開する『焼肉ライク』(東京都渋谷区)も、コロナ禍で特筆すべき実績を残している。
「18年の創業から1人で行ける焼肉をコンセプトに、〝おひとりさま焼肉女子〟を世間に定着させた立役者で、おいしい焼肉がファストフード並みの価格で堪能できる。昨年暮れも名古屋に国内49店舗目を新規オープン。隣席との完全間仕切り、1人様用の無煙ロースター、3分内での完全換気が、コロナでも焼肉を食べたい層に好評です」(同)
ここまでの人気店リサーチで、このコロナ禍において焼肉業界がなぜ繁盛しているのか、ポイントが見えてきた。
「洋食や麺類などは、味はともかく、巣ごもり家庭でも見よう見まねで作れる。しかし、焼肉は鮮度の問題や煙対策で家庭では扱いにくく、専門店に頼るのが無難。それが焼肉店に客が群がる理由です。その中でも他より一歩、何か抜きん出た焼肉店が勝組になっている」(フードライター)
「ウイズコロナ時代」の焼肉ブームは、どこまで続くのか。ワタミ同様、焼肉業界への殴り込みをうかがう業者は目白押しだ。今後は過当競争、サバイバル合戦が懸念される。
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