新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食業界が大きな打撃を受ける中、昨年10月から新業態の『焼肉の和民』を展開する外食チェーン大手のワタミ(東京都大田区)が、既存の居酒屋業態と比較して前年売上比283%を記録したと発表した。
しかし、この好調ぶりは『焼肉の和民』に限った話ではない。実は飲食業界の中で、「焼肉」だけに異変が起きているという。なぜ焼肉がコロナ不況に強いのか、その秘密に迫った。
まず、国内最大の飲食業団体「日本フードサービス協会」の統計データから、焼肉業界の強さを分析してみたい。
昨年4月に緊急事態宣言が出され、外食産業は軒並み苦戦を強いられるようになった。しかし、問題はそれ以降だ。2020年10月の統計によれば、最もダメージが大きいとされる居酒屋の売上高は、対前年同月比66.2%までしか回復していない。
「一方、焼肉業界における昨年10月の売上高は、対前年同月比108.7%。客足も同108.8%まで回復し、コロナにめげず前年を上回ったのだから驚きです」(飲食業界関係者)
居酒屋と比較して人件費を抑えることができる
次にワタミの実例を挙げ、業績が伸張した秘密を解説してもらった。
「ワタミは昨年前半、約400店舗あった居酒屋の売り上げが、コロナの影響で前年比4割前後ダウンしました。そのため、生き残りをかけて昨年10月から今年3月期末までに、グループの約3割にあたる120店舗を『焼肉の和民』に業態転換する大胆手法を打ち出した」(同)
焼肉屋業態は居酒屋業態と比較して、人件費を大幅に抑えることができる。居酒屋は調理に人手がかかるが、焼肉屋はカット肉を提供するだけ。そして、焼くのは客で、実質的にセルフサービスだ。しかも、夜間での営業が主な居酒屋に対し、焼肉屋は昼夜営業が可能とメリットが多い。
ワタミの焼肉店がヒットした理由として、さらに二つの要因が加わる。一つは徹底したコロナ対策だ。
「ワタミは新しい生活様式下の外食ニーズの変化に応えるため、ウイルス対策に有効という無煙ロースターと強力換気装置で、3分に1回の店内換気を実現しました。また、料理配膳ロボットや特急レーンなどの導入により、人との接触がコロナ以前より8割減となっています」(同)
二つ目は商品である肉のこだわりだ。
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