内閣支持率が過去最低の35.0%(共同通信)まで続落し、岸田文雄首相が窮地に立たされている。ここまで支持率が落ち込んだ要因は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員とのズブズブな関係に加え、その度合が高かったとされる安倍晋三元首相の国葬実施にほかならない。
岸田政権発足からちょうど1年となった10月4日、北朝鮮は早朝に弾道ミサイルを発射した。ミサイルは青森県上空を通過し、飛距離は過去最長の約4600キロに及んだ。首相は目を丸くしたに違いない。この発射実験の結果、北朝鮮が米領グアムを射程に収めたことになり、同国の対米戦略が新たな局面に入ったことを意味するからだ。
北朝鮮メディアは10日、「新型の地対地中長距離弾道ミサイル」と報じた。日本の上空を通過するのは5年ぶりだが、当時の飛距離は約3700キロと推定されており、戦力強化が進んだことは間違いない。
ただ、不謹慎ではあるが、今回のミサイル発射は「渡りに船」(自民党関係者)との声も漏れた。旧統一教会の問題から国民の目をそらし、危機管理能力をアピールする絶好の機会になり得たからだ。
タカ派で鳴らし、北朝鮮による拉致問題をライフワークにしてきた安倍氏は、そうやって政権を浮揚させてきた。しかし、岸田首相には安倍氏が持っていた勇ましさはない。
追い詰められた岸田政権に新たな疑惑
4日夜、首相は記者団に「断じて許すことができない暴挙。日米で強い連携を確認したい」と語ったが、ただ役人が作った文面を読んだにすぎず、そこからは何も伝わってこなかった。
ちなみに、安倍氏は5年前のミサイル発射の際、記者団に「国民の生命と財産を守るために全力を尽くしたい。北朝鮮に強い圧力をかけ、彼らの政策を変えなくてはならない」と述べている。どちらのメッセージが力強いのかは自明のことである。
しかも、今回の発射では全国瞬時警報システム(Jアラート)の誤発信があり、首相は運にも突き放された。
話題を北朝鮮にさらわれたくない立憲民主党や共産党などは、3日から始まった臨時国会の代表質問で、しつこく旧統一教会問題について問いただした。
そんなさなか、教団との接点が外部からの指摘で次々と明るみに出ている山際大志郎経済再生担当相に、新たな疑惑が発覚した。
2018年に旧統一教会が主催する会合に出席した際、教団トップの韓鶴子総裁と会っていたというのだ。野党が沸いたのは言うまでもない。
かくして追い詰められた岸田首相にとって、北朝鮮のミサイル発射は国民の目をそらすための好材料。金正恩総書記と、実は思惑が一致するのである。
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