歌手『青い三角定規』/西口久美子インタビュー〜史上初ジーンズで紅白歌合戦に出場!?
学園ドラマの金字塔といえば、村野武範主演の『飛び出せ!青春』(日本テレビ系)。その主題歌『太陽がくれた季節』を歌ったのがクーコこと西口久美子だ。グループ名は『青い三角定規』。
裾がやや広がったジーンズを穿きこなし、颯爽と歌う姿が目に焼き付いている方も多いだろう。同グループはわずか2年で解散してしまったが、クーコは歌を続け、今年で歌手デビュー51年になる。2018年、惜しまれつつこの世を去った西城秀樹とは最晩年、同じコンサートで全国を回ったという。昭和歌謡の懐かしエピソードを聞いた。
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――♪君は何を今 見つめているの〜で始まる『太陽がくれた季節』(山川啓介作詞・いずみたく作曲)は100万枚を超えるミリオンセラー。当時の忙しさはどんな感じでしたか?
西口 本当はあの主題歌、本郷直樹さんが歌う予定だったんです。ところがイメージがちょっと違うということで、私たちに回ってきた。『青い三角定規』はその前年にデビューしていましたが、まったくの無名グループでした。番組に合わせて臨時発売という形でレコーディングしたのですが、まさかあんなに大ヒットするなんて…。ただ、曲はヒットしても歌い手はしばらく無名のまま(笑)。その後、テレビ番組や取材対応などで睡眠が2〜3時間という日々が続きました。
――一夜にしてスターになり、生活も潤ったのでは?
西口 あの頃はデビュー3カ月の新人。お給料制のため最初は5万円くらいでした。そのうえ衣装は全部自前で、同じジーンズでは出たくないからと、一点ものばかり買っていましたね。お金がたまるはずないです。
――その年のレコード大賞新人賞を受賞し、紅白歌合戦には史上初めてジーンズで出場したと話題になった。
西口 確かに、そういう騒がれ方もしたんですけど、よく調べてみたらマイク眞木さんが『バラが咲いた』でお出になっていたんです。
ベストジーニスト推薦してくれない?
――では、西口さんは女性初、ということで。西口 そういうことになりますね。
その後、『青い三角定規』は2年で解散。以来、西口はソロで活動。歌手はもちろん、女優、パーソナリティーなどもしてきた。
西口 あの2年間は本当に濃密で、サイン会などでスケジュール表は真っ黒。解散後にようやくボーイフレンドができたくらい(笑)。
――勝手な印象ですが、解散後はジーンズを封印してきたんでしょうか?
西口 そんなことはないですよ。今も大好きでプライベートではよく穿きますし、60本くらいは持っています。ただ、『太陽がくれた季節』ばかりを歌うわけじゃないですから。ジーンズが曲のイメージに合わないこともあるので、ステージではあまり穿かなくなりました。でも、自慢じゃないけれど、ジーンズは私の体型に合っていると思うんです。ずっと穿き続けていたら、ベストジーニストに選ばれていたんじゃないかって、ちょっぴり悔しい思いはしてるんですけどね。どなたか、推薦してくれないかしら(笑)。
――『太陽がくれた季節』がリリースされた1972年は麻丘めぐみ、森昌子、三善英史、郷ひろみなど昭和歌謡の黄金時代を築いた同期がたくさんいます。その中でも、西城秀樹さんとは特別な因縁があるそうですね。
西口 亡くなる前の5〜6年間は一緒に全国を回っていました。最後のステージとなった2018年4月14日の栃木県足利市の舞台も一緒だったんです。オープニングでは私の振り付けで女性陣6人くらいが『情熱の嵐』を踊っていました。ラストは全員で秀樹さんを囲み『YMCA』を歌うんです。「じゃあね、またね」と挨拶をして別れたんですけど、まさかあれが最後になってしまうなんて…。
――秀樹さんとの思い出は他にありますか?
西口 実は私、『青い三角定規』でデビューする4年ほど前、ダンシングチームを組んでいたんです。振り付けをしたのもその関係なのですが、2010年にはエクササイズとゴーゴーダンスをミックスした『クーコのエクサ★ゴーゴー』というDVDを出しました。ゴーゴーダンスの手の振りやリズミカルに腰を動かすことが健康に良いということを提案していて、以来12年間カルチャースクールで教室も開いています。秀樹さんとのステージでも、休憩時間にお客さんに向けて一緒にやっていたんですね。ステージ袖で見ていた彼が「そのDVD、買いたいな」って。買うなんて水くさいと、プレゼントさせていただきました。足踏みのリハビリを教えたり、衣装のボタンが外れた時やほつれができた時は、私が裁縫好きと知っているので「クーコお願い」って。そういうことが思い出されます。
人気絶頂期に大物の方から言い寄られて…
――先ほどボーイフレンドの話が出ましたが、結婚はされてないんですね?西口 はい、独身です。たまたま、父と母の介護が婚期に当たってしまったこともありますが、お付き合いした男性によく「あなたはお嫁さんになるより仕事の方が合ってるね」と言われてフラれました(笑)。確かに、子供の頃からエンターテインメントの世界に興味があって、衣装作りとか演出など裏方作業も好きなので、納得した部分もあります。結婚しなかったことに後悔はしてないですよ。
――人気絶頂期に「俺と付き合えば仕事をあげるよ」みたいなことはなかった?
西口 それがまったくなかったんですよ。アイドルから電話番号を聞かれたこともないです。ただ、ものすごい大物の方から言い寄られてお付き合いをしたことはあります。秘めた恋だったので、人目を避けてご飯を食べたり、ドライブデートをするのが関の山でした。
――現在は『夢スター歌謡祭 春・秋コンサート』が活動の中心ですが、西口さんは秋組。女性陣はあべ静江さん、伊藤咲子さん、リリーズさんとご一緒ですね。
西口 しーちゃん(あべ)もさっこ(伊藤)もリリーズもほぼ同じ時期に歌番組に出ていたので、すごく仲良しです。昔話というより、健康のこととかその日の衣装のことをあれこれ話すことの方が多いですけどね。
――そういえば20年ほど前、ご自宅が全焼して思い出の品をほとんど焼失してしまったそうですね。
西口 借家の一戸建てだったのですが、グラビアの切り抜きや衣装、譜面など一切合切がなくなり、ショックで立ち直れませんでした。でも、焼け跡を掘り起こしてみると、学生時代の写真や指輪が出てきたりして、少しだけうれしかったですね。今も大事に保管しています。それに、私には『太陽がくれた季節』という偉大な財産がありますから。
◆にしぐちくみこ 1950年11月1日生まれ。『青い三角定規』(高田真理、岩久茂)は71年、『翼を忘れた天使たち』でデビュー。毎年恒例のディナーショーやコンサート、ライブなど精力的に活動中。 オフィシャルサイト
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