各世論調査で反対が多数派を占める中、ついに9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬儀。他方、この前日である9月26日が、第一次安倍政権退陣からちょうど15年であることは、意外と知られていない。
「安倍氏は2006年9月、小泉純一郎氏の跡を継ぐ形で一度目の首相に就任。戦後最年少の若さや前政権が長期でマンネリ化していたこともあり、発足時の支持率は各世論調査で7割前後にも上りました」(政治ジャーナリスト)
だが、華々しかったのは最初だけ。その後は、若さと閣僚経験のない未熟さにより、お粗末過ぎる政権運営に終始する。
「第一次政権最大の問題といえば〝消えた年金〟。当時の社会保険庁職員が年金を着服していた他、加入記録を残しておらず、5000万件もの〝納付者不明〟年金記録があると発覚しました。安倍氏は当時、国会や演説で『最後のお1人に至るまで正しく年金をお支払いしていく』と言い切り、『2008年3月末までに確実に完了させる』と自ら期限も切りましたが、現在も約2000万件が宙に浮いたままとなっています」(地方紙記者)
このように、当時の安倍氏は言葉の軽さが際立っていた。
「07年夏の参院選、安倍氏は『私と小沢(一郎)さんのどちらが首相にふさわしいか』と、政権交代に無関係な参院選にもかかわらず、自ら国民に問い掛けました。結果は自民党の歴史的大敗だったのですが、安倍氏は国民から『ふさわしくない』と判断されたのに続投宣言。結局、2カ月後には辞任したのですから、発言はその場しのぎの印象でした」(同・記者)
失言・不正・辞任連発・選挙敗北…
本人のみならず、閣僚も辞任が相次ぐほど不祥事にまみれていた。
「07年1月、当時の柳澤伯夫厚労相が『女性は産む機械』と発言して大炎上し、安倍氏自ら厳重注意。5月には、松岡利勝農水相に、虚偽記載をはじめ巨額の〝政治とカネ〟問題が発覚。最後は安倍氏に意味深な手紙を残し、現職大臣の自殺という史上初の結末となりました。7月には久間章生防衛相が『原爆投下はしょうがなかった』との発言で、また8月には赤城徳彦農水相が不正な事務所費問題などで辞任しています」(同・記者)
国会運営でも、実に70回を超える強行採決が行われるなど問題だらけだった。
「07年度の予算案から国民投票法・教育基本法改正といった重要法案まで、安倍政権は審議不十分なまま強行採決を連発。同政権の動きを克明にまとめ、当時ベストセラーとなったジャーナリスト・上杉隆氏の『官邸崩壊』では、衆院だけで14回、両院の委員会まで合わせると70回以上もの強行採決が行われたとその数がまとめられています」(前出のジャーナリスト)
そして9月12日、国会での所信表明演説を終え、今後の国会運営の方針を語ったわずか2日後に辞意を表明。続投宣言から一転の辞任に国民は呆れ返り、「無責任」「混乱させただけ」とのイメージを負いながら、奇しくも内閣〝誕生日〟の9月26日に発足ちょうど1年で総辞職となったのだった。
15年前の今ごろ、安倍氏はその無責任さから国民の嫌われ者だった。それがここまで惜しまれる存在になるとは、本人も予想していなかったことだろう。
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