(画像)Naresh777 / Shutterstock.com
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岸田政権“支持率20%台”大幅ダウン!首相は麻生氏&茂木氏に不信感か

「そんなに下がったのか。とにかく今は耐えるしかないな」


毎日新聞による世論調査の結果が事前に出回った9月18日午後、岸田文雄首相は側近の木原誠二官房副長官に、淡々とした表情で述べた。内閣支持率は前月より7ポイントも低い29%で、危険水域といわれる20%台に初めて突入。しかも不支持率は60%を超えていた。


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岸田政権への逆風はやむどころか、強まるばかりだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との深い関係が次々と明るみに出ていることに加え、27日に実施された安倍晋三元首相の国葬への批判、東京地検特捜部による東京五輪汚職の捜査、さらなる悪化が懸念される物価高、急激な円安…。この五重苦に襲われているからだ。


「嫌われないキャラクターで当初は高支持率を維持し、7月10日の参院選は勝利したが、ここにきて何もしてこなかったことのつけが回っている」


首相に近い政府関係者は表情を曇らせる。


官邸が何もしなかったわけではない。8月10日の内閣改造の際は、旧統一教会と関係のある議員には自己申告をさせ、関係を断つよう誓約させた上で登用した。


しかし、結果は留任を合わせて8人の閣僚が、旧統一教会と何らかの関係を持っていたことが判明。副大臣、政務官を合わせると30人を超えたのだ。


官邸は、内閣情報調査室や自民党本部を中心に、現職閣僚を含めて身体検査を行った。


「関係があるのではないかとの情報があったのは、初入閣することになる永岡桂子文部科学相だった。そこでいろいろと調べたが、関与があったとしても他の議員と同程度だということで『大丈夫』との判断になった」(前出・政府関係者)


つまり、次々と旧統一教会との関係が明らかになり、10月3日召集予定の臨時国会で、野党が真っ先に追及しようと待ち構えている山際大志郎経済再生担当相については、内閣改造の時点では「ノーマークだった」(同)のだ。


ただ、一部週刊誌が8月末に報じた、山際氏の地元事務所に勤める私設秘書が旧統一教会関係者ではないかという情報は、同月中旬には官邸にも入っていた。

もし森氏逮捕なら“負のイメージ”は増加

山際氏の選挙区である衆院の神奈川第18区は、川崎市高津区や、中原、宮前両区の一部がエリア。この辺りは旧統一教会にとって、日本で初期の頃から布教している活動の中心地の1つで、周辺には旧統一教会の支部が3カ所もある。

「山際は選挙に弱い。相当な支援を受けていてもおかしくない」として松野博一官房長官が直接、山際氏に事実関係を質したが「完全に否定した」(同)という。


それでも山際氏は松野氏に、「これ以上は迷惑をかけられない」と辞意をほのめかしたが、官邸としては「辞めると連鎖反応を起こす。ここは持ちこたえさせる」(自民党岸田派幹部)として思いとどまらせた。


だが、この秘書に関しては「無給で教会側から派遣されているのでは」という内部情報もあった。「無給が事実なら給与分については教会側からの闇献金と同じになり、守り切れない」(同)として、官邸は戦々恐々としているという。


官邸が抱える爆弾はほかにもある。森喜朗元首相もそうだ。東京地検特捜部が着手した五輪汚職で、前会長が贈賄容疑で逮捕された紳士服大手「AOKIホールディングス」側から、200万円を受け取ったとして事情聴取されたのだ。


産経新聞が特ダネとして報じた9月1日、自民党内には激震が走っていた。大会組織委員会の会長だった森氏が逮捕されれば、コロナ禍のさなか、批判を浴びながら開催された東京五輪の「負のイメージ」はぬぐいようがなくなり、それはそのまま政権を直撃する。


「自民党最大派閥の安倍派は、安倍氏亡き後、森氏が支えてきたと言っていい。森氏の逮捕で安倍派が一気に動揺すれば、首相の政権基盤が揺らぐ事態にもなり得る」


先の岸田派幹部は厳しい表情で話す。


それだけではない。幹部によると「党内では、特捜部が関心を寄せる現職議員が何人かいるといわれている。1人は森氏に近い参院議員で、1人は岸田派の閣僚経験者」だという。


森氏は85歳と高齢で、肺がんなどで闘病を続けてきたことから、今では車いすに頼る生活を余儀なくされている。そのため松野氏は、特捜部も森氏には配慮するとみており、そもそも「200万円程度で首相経験者を逮捕できない」と考えているようだ。


それでも不安はあるのだろう。官邸筋によると、松野氏は周囲に「森氏だけは守らなければならない」と心境を吐露。官邸の事務方トップである栗生俊一官房副長官は、法務省の高嶋智光事務次官と松本裕官房長を呼び、捜査状況について説明を求めた。


だが、「2人とも特捜畑出身でないため、情報に乏しく特捜部に対して抑えも利かない」(官邸筋)という。

麻生、茂木両氏への不信感

岸田首相はどうするのか。冒頭の発言のように、政権幹部の間では「安倍氏の国葬までは何とか耐え忍ぶしかない」というのが、共通認識になっていた。

もともと旧統一教会と深い関係にあったのは安倍氏。岸田政権を苦境に陥れた「張本人」なわけだが、その安倍氏を国葬という形で送り出すしかなかった以上、終わるまでは踏み込んだ対応をするわけにはいかない。


逆に言えば、首相は国葬後に反転攻勢を図ろうと動き出してはいた。9月12日夜、東京・丸の内の中華料理店で自民党の遠藤利明総務会長と、14日夜には東京・六本木のステーキ店で萩生田光一政調会長と、それぞれ会談した。


遠藤氏は首相にとって気の置けない側近であり、萩生田氏は、旧統一教会との関係で批判を浴びてはいるが、党執行部では遠藤氏とともに首相が最も信頼する幹部だ。


事情を知る自民党関係者によると、首相は一連の会談で、今後の政権運営をめぐって意見を交わした。


「臨時国会をにらみ、旧統一教会問題にどう対応していくか、さらには経済対策の規模や経済の見通しについても話し合った。政局絡みでは、菅義偉前首相の動きが話題に上った」


さらに、自民党関係者は「どちらの会合でも首相は、出席者の話に耳を傾け、必ず『世論調査の数字に一喜一憂せず、一つ一つ丁寧にやっていきたい』と述べていた」と話す。


首相がこだわりを見せたのは、コロナ禍で落ち込んだ景気を回復させるための経済対策だ。事業規模にして30兆円超となる見込みで、首相は「経済が回復すれば気分も変わる」と期待を寄せている。


「自民党が旧統一協会問題でしっかりと襟を正した姿を見せ、経済対策も打ち出して、景気の回復を国民が実感できるようになれば、岸田政権はもう一度上昇気流に乗れる」


先の自民党関係者は皮算用する。


しかし、政権の狙い通りにいくのかは不透明だ。旧統一教会問題で党執行部は、茂木敏充幹事長が9月8日、所属議員の半分近い179人に何らかの接点があったと発表した党の実態調査について、追加報告分とともに再集計する方針を決定した。


その上で、来年春の統一地方選に向けて、旧統一教会と一切の関係を持たないよう、地方議員や党員を含めて徹底していくことも決めた。


だが、安倍氏や細田博之衆院議長については、引き続き調査の対象とせず、地方議員や党員が本当に関係を断ったのかは、党として確認しないという。これでは「国民の不信感を払拭できない」(中堅議員)との批判もうなずける。


執行部は当初、麻生太郎副総裁と茂木氏が中心となり、全所属議員と地方議員、党員について、旧統一教会側との密接な関係が明らかになった場合には、「反党行為」とすることを含めて厳正に対処する方向で検討していた。


しかし、党員から「そもそも『密接』の基準があいまい」「信教の自由の観点から行きすぎ」などの懸念が寄せられ、処罰するかどうかは棚上げになっているのが現状だ。

「菅さん、やるね」とのつぶやきは…

自民党関係者によると、こうした状況もあり、首相は麻生、茂木両氏への不信感を募らせているという。茂木氏は、旧統一教会との関係について「大した問題ではない」と高をくくり、初期対応に失敗した。その後、党内調査の陣頭指揮を執ったものの、単なるアンケート結果を集約しただけだったとして、一層の批判を集めることになった。

安倍氏の国葬に向け、首相に電話で「腹をくくれ」と強く迫ったのは麻生氏だ。首相にしてみれば、これまでと同様に内閣・自民党合同葬で進めようとしていたのに、「麻生氏に押し切られた」と後悔したところで後の祭りだった。


これだけ厳しい局面になったため、首相は9月7日に国会近くの日本料理店で麻生、茂木両氏とも会食し、今後の政権運営について協議した。しかし、出席者の関係筋によると、「定期会合であり、あまり話が弾まなかった」という。


こうした中、永田町では9月上旬、「岸田首相が旧統一教会問題をリセットするため、衆院解散に打って出る可能性がある」との見方が一斉に流れた。


このままだと統一地方選で惨敗し、解散するタイミングは失われてしまう。ならば、まだ議席を大きく減らすことのない今のうちに、解散を狙うのではないかという見立てだ。


首相は周囲に「菅さん、やるね」とつぶやいたという。昨年の衆院選から1年もたっておらず、解散すれば議席を減らす可能性が高いのに「解散などするわけがない」(官邸筋)。事実上解散権を縛る、昨年の衆院選をめぐる「1票の格差」訴訟の最高裁判決もまだ先だ。それなのに、あえてこうした臆測を流すのは「政権を揺さぶって、自らの存在感を示すため」(同)だと首相は受け止めたのだ。


とはいえ、菅氏周辺が観測気球として流したのだとしても、曲がりなりにも岸田、麻生、茂木、安倍4派に支えられる岸田政権が倒れる雰囲気はない。


首相は、経済対策が効いてくれば、物価高効果で過去最高の税収と企業収益が見込めることで、賃金上昇への波及と財政再建が緒に就き、政権は持ち直すと考えている。


「首相は、2023年5月に広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)を成功させ、同年内のいずれかの段階で衆院解散に踏み切るのではないか。そして、24年秋の自民党総裁選で再選を期すというシナリオに一切の変更はない」


岸田派幹部は力強く語る。


この言葉が砂上の楼閣となるかどうかは、この先、半年間の政権運営にかかっている。