(画像)fizkes/Shutterstock
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テレビや新聞では報じない!重大事件の殺人犯・その後追跡リポート①〜鳥取連続不審死事件・上田美由紀

社会を震撼させた重大事件であっても、ひとしきり報道が過熱し、犯人の裁判が一区切りつくと、われわれが知り得る情報は少なくなりがちだ。面会と文通をはじめとする独自の取材データに基づき、テレビ、新聞が報じない著名な殺人犯の近況を報告する!


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〈新聞でアベさんの顔を見て、悲しさと淋しさが沸いてきました〉(原文ママ)


月刊誌『紙の爆弾』(鹿砦社)の9月号を読んでいたら、鳥取連続不審死事件の犯人・上田美由紀死刑囚(48)が連載コラム「広島拘置所より…」で安倍晋三元首相銃殺事件について、そんなことを書いていた。私は、「相変わらずだな…」とため息が出た。人の不幸を悲しむような言葉を発し、自分を良く見せようとするのは上田の〝手口〟の1つだからだ。


鳥取市でスナックホステスなどをしていた上田が、その存在を日本全国に知られたのは2009年の秋だった。取り込み詐欺を重ねて逮捕されるとともに、周辺で6人の男性が不審死していた疑惑が表面化したためだ。上田は肥満体型で5人の子持ち、自宅アパートもゴミ屋敷化していたようなタイプだが、不審死した男性の何人かと男女の仲にあり、多額の金品を受け取っていた。そんな事件の構図が世間の人たちの好奇心を刺激した。


捜査の結果、上田は6人のうち2人について、債務を免れるためにそれぞれ海と川で水死させたとして、強盗殺人罪に問われた。裁判では、「冤罪」を主張したが、17年に最高裁で死刑が確定している。

数多の男性を翻弄した“手口”

私は、上田が裁判中、松江刑務所に収容されていた頃に2年ほど面会や文通をした。上田は冗舌で、筆まめだったが、冤罪を主張しているにもかかわらず、事件のことを聞くと、いつもはぐらかした。

一方で、上田は、


「片岡さんが鳥取に取材に行く際は、私の友人の家に泊まってもらうつもりです」


「片岡さんには、子供たちにも会ってほしいです」


「母も片岡さんに会いたいと言っています」


などと都合のいいことを次々と口にした。だが、どれも一向に実現しなかった。


それ以上に煩わしかったのは、上田が私の機嫌を取るために他の報道関係者を悪く言うことだ。例えば、「××さんは有名なジャーナリストですが、私は片岡さんのほうを信用します。片岡さん、自信を持ってください」という具合だ。


上田が私のことを「有名なジャーナリストを批判しながら持ち上げると喜ぶ人間」と思っているのが透けて見え、不快指数はかなり高かった。そんな中、私が上田の〝手口〟を知ったのは2014年8月、テレビ朝日系『報道ステーション』の名物ディレクターだった岩路真樹氏(当時49)が自死したときのことだ。上田は岩路氏の取材も受けていたようで、岩路氏が亡くなる前は例によって、


〈たしかに岩路さんは色々報道してる人です。でも、大切な事をスッポリと忘れている気がしました〉


などと手紙で岩路氏のことを批判しつつ、私のことを持ち上げていた。

悪人というより人格に問題が…

ところが、岩路氏の訃報を知った途端、上田は豹変した。あたかも岩路氏と自分が特別な関係にあったようなことを言い出したのだ。

〈ダメです。私、立ち直れない。岩路さんの事が、受け止めれないです〉


〈何で、私を連れてってくれないの、私を残すのでしょうか? 岩路さんは何で、連れて行ってくれなかったのでしょうか?〉


上田はこのように岩路氏の死を嘆き悲しむ言葉を手紙に次々と書いてきたばかりか、「上田美由紀の手記」としてメディアに公表したいと求めてきた。岩路氏の死はネットニュースなどでも取り上げられていたので、便乗して自分を良い人間に見せようと考えたのだ。私はこれ以降、上田は悪人というより、人格に何らかの問題がある人物なのだと思うようになった。


上田は死刑確定後、処刑場のある広島拘置所に移監され、現在は面会も文通もできない。だが、獄中の上田の近況は支援者のSNSから伝わってくる。


『紙の爆弾』の連載では、拘置所内のラジオ放送などで聞きかじった知的障害者施設の大量殺傷事件や子供の虐待死事件、広島の原爆記念日などの話題に言及し、悲しんでいるようなことを書いてアピールするのが恒例だ。


安倍氏の死を悼むような冒頭の文章もそのパターンなので、私は「相変わらずだな…」と思ったのだ。


ただ、この連載も最近は休載が増えている。被害者や遺族に謝罪ひとつせず、良心の呵責とは無縁の上田も、死刑の恐怖に苦しみ、文章を書くのも辛いほど疲弊しているのではないかと思う。


(取材・文/片岡健)


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