『劇場版 山崎一門 日本統一』
監督/辻裕之
出演/北代高士、舘昌美、勝矢、中澤達也、本田広登、川﨑健太、小手山雅、岸田タツヤ、小沢仁志/山口祥行、本宮泰風ほか
配給/ライツキューブ 配給協力/ティ・ジョイ
9月23日から全国順次公開中。
『日本統一』初となる劇場版の主役は、本編シリーズに登場する「山崎一門」の8人。仲間を思い、弱きを助け、極道である前に1人の人間であることを大切にする組員たちが、無実の罪で捕らえられた仲間のために奮闘する姿を描いた物語だ。
今回、『日本統一』シリーズ同様、メガホンを握った辻裕之監督に作品への思いを語っていただいた。
――初となる劇場版ですが、撮影をする上で心掛けたことはありますか?
辻「映画界によくあるのが、劇場版というとどうしても力が入ってしまうこと。話がオーバーになったり、ゲストがいっぱい出てくるパターンになることが多いんですけど、今回は平常運転でいつもの作品に上積みがあるだけ。ほんの少しだけスケールアップさせた感じです。そのおかげで、撮影はとてもうまくいったと思う。シリーズ本編のファンにはこれまでと同様、そのスピンオフのような感覚で見ていただきたいし、シリーズ本編を見たことがない方も楽しめる作品になっていると思います」
――撮影は昨年12月に行われたそうですが、苦労などはありましたか?
辻「撮影での苦労は嫌いなため、基本的にありません。『一生懸命やって、いいものを作ろう』というのは当たり前のことですが、『ふざけて楽しいものつくろう』というスタンスでやっていますし、これはキャストの共通認識です(笑)。ただ、映画のラストはアクションシーンなのですが、やはり時間がないといいものができないので、撮影日をたくさんいただきました。劇場版とシリーズ本編で大きく違ったのは、撮影にかける日数が増えたことですかね」
シリーズの途中から監督へ
――シリーズ本編の『27』から監督を務めていますが、監督としてのキャリアの中でも、最も長く関わった作品になったのでは。
辻「確かに一番長いですけど、まさか、『50』を超えるシリーズになるとは思わなかったですね。もともと『1〜5』まで脚本を書いていて、そこからしばらくしたら(本宮)泰風から電話がかかってきて監督をやることになったんです。ただ、監督になった頃はレンタルビデオだけで動画配信がなく、その時すでに、あまりレンタルを見る人がいなくなっていたんです。結果、『30』あたりから配信とCSでの放送が始まったことが〝追い風〟になって続いていますけど、監督を引き受けた当初は、こんな長編になると思っていなかったのが正直なところです。よく聞かれますけど、先のことは全然決まっていないです」
――シリーズ途中からの加入で、大変だったことはありましたか?
辻「登場人物の人間関係が全然分からなかったですね(笑)。もともと脚本を担当していた時に、自分がその先のことを考えていた登場人物が死んじゃったり、組織の役職に就いたりとか、誰が誰だかチンプンカンプンだったので、思わず役者に人間関係を聞いてしまいました。泰風は今、総合プロデューサーになっているけど、結局、『1』からずっと出演しているのは泰風と山ちゃん(山口祥行)ぐらいしかいない。監督の自分よりも、泰風が一番作品のことを分かっていますよ」
さまざまな形でシリーズを盛り上げている『日本統一』。今回の劇場版以外に、「山崎一門」が主演のスピンオフ作品の最新作『日本統一外伝 山崎一門5〜横浜死闘篇〜』(8月25日リリース)では、劇場版で中澤達也が演じる川上章介を中心に描かれている。
――映画の主演8人も、シリーズ本編とスピンオフで作品を重ねていますが、成長ぶりはいかがですか?
辻「北代(高士)、舘(昌美)、勝矢はもともとプロの役者ですけど、中澤や本田(広登)などは、もともと演技経験がないところからのスタートだった。『山崎一門』の1人を主役にしたスピンオフをやると決まった時、あいつらは『ヤバイ!』と危機感を持ったんです。泰風とか山ちゃんが主役の本編ならそれに乗っかればいいけど、『自分たちで売れるのか!?』ってね。台本が出来上がるや、すぐに稽古場を借りてやり始め、途中、台本も変えてきたりするんで、本当に成長しましたね。1人を主役にしたスピンオフ作品ではそろそろ一巡するんで、前と同じ、全員のパターンに戻そうかと。だから、劇場版も芝居に関しては何も言わない。カメラを構えて『やって』って言うだけでした」
ダークファンタジーとして
――『日本統一』は監督としてのキャリアの中でどういう位置付けになりますか。
辻「自分にとっての復活作ですね。自分は過去にVシネマでブームを作ったことがあるんです。最初は実録ヤクザものをやり始めたんですよ。作品は『実録・広島やくざ戦争』(2000年製作、小沢仁志主演)で、そこから他の監督も実録ものをやり始めて、どんどん俺のところにも話が来たんです。ただ、その後はいろいろあって2年ぐらい1本も撮っていない空白の期間があった。この業界に戻ることを半ば諦め、貯金で食いつないで転職活動して引退を考えてた時に、泰風から電話があって、『日本統一』をやることになったんです。それがなかったら、今頃何をしていたか分かりません」
――最後に、作品のアピールをお願いいたします。
辻「台本を書いた当初は〝実録もの〟に寄せていたんですけど、今はファンタジーだと思って撮っているので、ダークヒーローものとして見ていただけたらうれしいです。いわゆるダークファンタジーですよ(笑)。配信のおかげで、女性のファン層も広がっているようで、なるべくゴリゴリの話にしないように心がけていますね。山崎一門はスピンオフを始めた頃に、それぞれにキャラクターを出すようにしていたおかげでファンも付いてきました。今回の映画では、みんなの個性が最大限に出ていると思うので、そのあたりを見てほしいです」
(撮影/笠井浩司)
つじ ひろゆき
1963年5月23日、神奈川県出身。今村昌平、北野武の助監督を経て、1993年Vシネマ『銀玉命!銀次郎2』で監督デビュー。Vシネマを中心に監督業をこなす。『日本統一』は、2018年の本編シリーズ27作目から監督を務める。
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