企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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2023新春「おせち」商戦スタート〜企業経済深層レポート

まだ暑さの残る9月だが、百貨店やECサイトでは、一足早いおせち商戦が始まっている。


円安不景気の中、おせちに限っては今年も対前年を上回るのは確実と見て、業界では例年になく力が入る。


今年のおせち市場の規模、推移はどうか。百貨店バイヤーが分析する。


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「大手調査会社の富士経済によれば、2021年から22年にかけてのおせち市場は、対前年比10%増の718億円。00年ごろには約300億円といわれましたが、20年には倍の600億円市場となりました。そこから1〜2年で100億円以上も増える急成長ぶり。伸びている理由は大きく2つあります」


まずはコロナ禍の巣ごもり需要。加えて消費者マインドの変化。おせちは「家庭で作るもの」から「購入するもの」へと変わりつつあるのだという。


「百貨店のおせち売り上げでトップを争う高島屋では21年が対前年比で12%伸び、今年も7%前後は伸びると見ています。他の百貨店でも同様の伸びが期待されています」(同)


ハースト婦人画報社が9月に公表した、女性約1000人を対象としたアンケートによれば、来年のお正月用におせちを「購入する」と回答した人は46.6%と半数近くにも及ぶ。


平均予算は約3万円とやや高め。購入動機は「華やかで高級感がある」「自宅で作れないような品目が味わえる」などが上位になっている。

コロナも落ち着き集える正月に

では今年の消費者の要望や好みはどうなっているのか。別のバイヤーが言う。

「コロナ禍だった昨年と今年の正月は帰省や旅行が制限され、『せめておせちくらいは』というマインドが強く働いたようです。大手百貨店やECサイトでは、数十万円もする老舗料亭のおせちが飛ぶように売れ、高級宝飾店ブルガリの系列の銀座ブルガリが提供する40万円のおせちまで登場し、大いに話題となりました。全体としては、比較的高額のおせちが売れ行きを伸ばす一方、巣ごもりの影響で小分けにした『個食おせち』も伸びたのです」


さらにこう続ける。


「来年の正月はコロナの影響をそれほど受けないという予測のもと、おせちのニーズも多様化、活発化し、前年よりもさらに伸びると見られています。業界では『進化系おせち』と『集い』がキーワードになっています」(同)


具体的にどんなおせちが売られるのか。まずは大手百貨店、高島屋(大阪)だ。フードアナリストが話す。


「2023年にフランスでラグビーワールドカップが開催されるため、元日本代表の田中史朗選手と共にメニューを開発し、『高島屋 ラグビー応援おせち』を2万8080円(税込)で販売します。ラグビーウエアやラグビーボールを料理にあしらい、体作りに効果的だといわれる高タンパク質の食材にこだわっています」


また全国の郷土料理をにぎやかに盛り込んだ「鉄道で日本を旅するおせち 2段重」は鉄道カードゲーム付きで、2万9160円(税込)で売り出す。


「北海道の松前漬から沖縄県のサーターアンダギーまで、日本各地の郷土料理16品目が華やかに並ぶおせちです。コロナ禍でも皆が集まることを想定して、鉄道のカードゲーム付き。久々の帰省、家族だんらんの時間をサポートします」(同)


変わり種としては、犬用猫用の「ペットと一緒にお正月を祝うおせち」を1万6956円(税込)で販売する。

SDGsなど各社おせちがそろい踏み

一方、大手百貨店のそごう・西武(東京)は「集い」をテーマに大躍進を狙う。経営コンサルタントが語る。

「そごう・西武も高島屋同様、コロナ禍でも久々に家族3世代が集まると見ています。子供や若者に向けて『エビ』や『肉』を1段丸ごと詰め込んだ『美味づくし』を売り込む構えです」


エビ料理満載の「美味づくし 和洋3段重『福』」は4人前で3万2400円(税込)。和牛や豚、鶏から合鴨や仔羊まで、ロースト肉を1段に敷き詰めた「美味づくし 和洋中3段重『豊』」は3〜4人前で3万2400円(税込)だ。


コンビニ大手のローソン(東京)は「すべての人々に持続可能な未来を築く」SDGs推進に沿った商品販売にチャレンジする。小売業関係者が言う。


「正規の商品としては売り物にならない、折れてしまった数の子など規格外食材を集めた『もったいないおせち』を1706円(税込)で売り出します」


他にも、国産黒アワビの旨煮、千葉県産伊勢エビなど、厳選の国産食材を使用し、味付けにこだわった「国産食材使用 プレミアム和風3段重」(4万2984円・税込)は、包装資材や容器を紙などに置き換え、99%のプラスチックを削減して販売する。


来年正月のおせちは、ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢とも無縁ではないようだ。現在、ロシア産のイクラやカニなどの海産物は「流通が非常に不安定」なのだという。百貨店バイヤーが言う。


「こうした事情からも早めの予約が無難です」


コロナが鎮静化し、ウクライナ戦争も止み、おせちでホッと一息つける正月を迎えたいものだ。