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『令和の“応演歌”』水森かおり~ご当地ソングでたくさんの心の故郷ができました(後編)

水森かおり
水森かおり (C)週刊実話Web

――前編ではデビューからNHK『紅白歌合戦』の常連組になるまでのお話を伺いました。ご当地ソングの女王と呼ばれているのにふさわしく、今年2月にはシングル『九十九里浜』を、9月21日にはアルバム『歌謡紀行21〜九十九里浜〜』を発売しました。水森さんは東京出身ですが、曲の舞台である千葉県の九十九里浜に思い出はありますか?

水森 東京出身だと、海水浴に行くなら、神奈川県か千葉県に分かれると思うんですね。私は北区出身ですから、千葉のほうが行きやすかったので、初めて海水浴へ行ったのが九十九里浜なんです。家族や親戚とキャンプや潮干狩りに訪れたりした当時の写真が、今でも残っています。そうした思い出の場所についての曲を歌わせて頂けるのは、なんだか不思議な気持ちになりますね。

――今回のアルバムでも、さまざまな土地の曲が収録されていますし、これまでにも日本全国のご当地ソングを歌っています。

水森 デビュー当時は、東京出身の歌手は故郷に錦を飾るという気持ちが少なく、ハングリー精神があまりないから売れないと言われたこともありました。東京出身であることにコンプレックスを抱いていたこともあったんです。でも、ご当地ソングに巡り合い、その土地その土地の方に「ありがとう」「今度はうちの地元を歌ってね」と声を掛けてもらえるようになったことで、東京出身で良かったなと思うようになりました。

やはり、日本には海や山などの風光明媚な土地がたくさんあります。そうした土地に巡り合う度に、東京出身だからこそ、比べる対象がないのですべてが美しく見えるんです。ご当地ソングに出会い、たくさんの心の故郷ができましたね。

自然体で等身大の世界を表現したい

――2年後にはデビュー30周年を迎えます。これから挑戦したいことや目標はありますか?

水森 デビュー当時から漠然と、私とそう年齢の違わない同世代の方々にも演歌を届けたいという気持ちがありました。普段、演歌を聴かないけれども、水森かおりの曲なら好きで聴いてもらえると。そういう気持ちを意識して活動してきたわけではないのですが、同世代の方が聴いているという話を耳にする度に、少しずつ漠然とした想いに近づいたのかなと感じることはあります。

私が歌う曲は、もしかしたら演歌の大ファンの方からすれば演歌ではないと思われるかもしれません。こぶしをそこまで回しませんし、前編でもお話ししたようにポップスから演歌までさまざまな曲を聴いて育ってきましたから。でも、それで良いのかなと思っています。年齢を重ねる度に、段々と自然体で等身大の世界を表現できるようになってきたと思うんです。

今回のアルバム『歌謡紀行21〜九十九里浜〜』には、九十九里浜以外にも松島(宮城県)や小豆島(香川県)などさまざまな土地を歌っています。〝歌で旅する〟がコンセプトのアルバムです。リスナーの方にとって1カ所は思い出深い土地の曲が収録されているかもしれません。ですから、普段、演歌を聴かない方にも、演歌だからと敬遠せずに、スーパーの試食コーナーではないですけど、ちょっとでも立ち止まって耳を傾けて頂けたら嬉しいですね。

水森かおり(みずもり かおり)
1995年『おしろい花』でデビュー。19年連続で紅白歌合戦出場中。「ご当地ソングの女王」と呼ばれる。9月21日にアルバム『歌謡紀行21〜九十九里浜〜』を発売。

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