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蝶野正洋『黒の履歴書』~時代の流れによる変化の有無

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

俺の大先輩、藤波辰爾さんが歌う『マッチョドラゴン』という曲をご存知だろうか。

1985年にリリースされたレコードで、その独特なリズムと歌唱力で俺たちレスラーの間では禁句とされていたんだけど、先日NHKで放送された『1オクターブ上の音楽会』という番組でその封印が解かれ、藤波さん本人が登場して37年ぶりに歌唱。その変わらぬインパクトで、大きな反響を呼んだ。

俺もNHKからコメントしてくれと頼まれて、番組に出演して発売当時の様子や感想を淡々と語らせてもらった。

本当に藤波さん本人が歌うのかと、オンエアを見るまでは半信半疑だったけど、さすがだったね。あの頃と変わっていないようで、それでも味わい深さが増していて、最高だった。

番組でも言ったけど、あの曲は上手い、下手を超越して耳に残る。たぶん番組を見た視聴者も同じで、一度聞いたらずっと頭の中で鳴り続けているんじゃないかな。その洗脳効果を生かして、本気で紅白歌合戦を目指してほしいね。

紅白歌合戦といえば、女VS男で争っていて、いまの時代に合っているのかという議論がよくされているけど、現在、プロレス界で物議を醸しているのが、新日本プロレスと女子プロレス団体スターダムの合同興行で行われる予定の男女混合タッグ戦、いわゆる「ミックスドマッチ」の是非についてだ。

男女が入り乱れて試合をするミックスドマッチ自体は、いまやさまざまなプロレス団体で日常的に行われている。でも、それに新日本プロレスの選手が参加するとなると、反発するファンも多い。

時代とはいえ男女の体格差はある

試合中は、男は男、女は女としか相対しないというルールになっているけど、それも含めて賛否両論だ。

かくいう俺も、2002年に新日本プロレスの東京ドーム大会で、元WWFの「チャイナ」という女子レスラーと試合をしたことがある。彼女は178セント82キロの体格で筋骨隆々、男子選手を上回るパワーを持つ選手とされていた。

俺はこのカードに対してまったく乗り気ではなかったけど、まぁプロとして料理は出来るということで試合に臨むことになった。

でも、いざゴングが鳴って組み合った瞬間に、これは女性だと感じた。やっぱり体の作りが違うから、いつも通りに試合をしたらケガをさせてしまうと本能的に思った。

『ガキの使い』に初めて出演させてもらった時に、エキストラの人にビンタをしたことがあるんだけど、相手が受けきれずに吹っ飛んでしまったことがあった。簡単に「手加減」っていうけど、それをやろうとすると、けっこう難しいものなんだよ。

だから男子VS女子は、試合にはなるかもしれないけど、闘いは成立しない。そういうものを新日本プロレスがやる必要がないし、選手たちも戸惑うだけなんじゃないかなと俺は思う。

興行として、バラエティー的なカードはあっていいと思う。だけど、新日本プロレスは業界の盟主という誇りを持って、ブレずに闘いのあるプロレスを追求してほしい。世間の流れはいろいろあるけど、変わらない良さということはあると思うからね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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