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蝶野正洋『黒の履歴書』~ハメを外すでは済まされない「性加害問題」

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

俳優の香川照之さんが起こした、銀座ホステスへの性加害問題で、さまざまな意見が噴出している。

週刊誌によると、3年ほど前、知人に呼ばれて銀座の高級クラブを訪れた香川さんが、酒に酔ってホステスのブラジャーを剥ぎ取って匂いを嗅いだり、胸に触る、キスをするなどのセクハラ行為を重ねたという。

この一部始終を読むと、これはもうセクハラや性加害の範疇を超えて、わいせつや暴行と言ってもいい状況。香川さんは悪役を演じることが多いから、そのイメージのままというか、プライベートでもドラマのキャラクターみたいなことをしてるんだと驚いたね。

それに〝市川中車〟という歌舞伎界の人間でもあるから、昔ながらの豪快な遊び方を受け継いでいて、このくらいは許されると思っていたのかもしれない。

とはいえ、いまだにこんなバブル時代みたいなことしてる人がいるんだなとも思った。明らかに時代遅れだよ。

俺は30年以上前にスポンサー関連の宴席に呼ばれて銀座の店に行ったことがある。あの頃のバブル紳士はカネが余ってるから、普通の飲み方はしない。例えば、店の女のコのハイヒールを脱がせて、そこにシャンパンを注いで一気飲みしたら10万円をあげるとか、ただチップをあげるのに飽きてるから、そういう度胸試しみたいなことをしていた。俺は酒もあんまり飲めないし、そういう雰囲気も好きじゃないから、居心地は悪かったよ。

ただ、銀座には、そういうハメを外す客がいて、そこを手練のママが切り盛りしてうまく収めたり、情報を外に漏らさないという文化があった。それからバブルが弾けて、リーマンショックが直撃し、日本は未曽有の不景気に突入して、コロナ禍もあった。銀座もすっかり変わったし、人々の意識も変わったんだろうね。

どこでも買えて飲めるという問題

それと今回の事件の元凶の1つに、酒の飲みすぎというのはあるよね。テレビのワイドショーは、スポンサーの絡みもあるから強く言えないんだろうけど、やっぱり酒の危険性というのはあると思う。

香川さんも飲まなきゃこんなことをしないはず。そもそも、銀座のクラブだからある程度は許容すべきとかいう以前に、酒を飲んでるから暴れても仕方がない、という空気がよくない。飲んでも飲まなくても、ダメなことはダメなんだよ。

俺は酔っ払って絡んでくるようなやつが一番嫌いだからね。特に〝お前も飲め〟と強要してくるやつには、何度もキレたことがある。飲んで性格が変わってしまう、というのが本当なら、酒はもはやドラッグだよ。

最近、若者の酒離れが叫ばれているけど、その危険性を察知してるからじゃないかな。今回の事件もそうだけど、酒に酔ったおかげで人生がダメになってしまうということが、毎日のように報道されているからね。

今はいつでもどこでも酒が買える、飲めるというのが問題なのかもしれない。年齢制限だけでなく、酒そのものの規制も本気で考えなきゃいけないと思うけど、これは税金関連の問題もあって難しいんだよね。

とりあえず、銀座のクラブも今後はノンアルコールにすればいいんじゃないかな。それじゃ楽しめないというなら、最初からその程度の遊びだということだよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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