企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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シルバー層にも「メンズコスメ」新規市場拡大〜企業経済深層レポート

男が化粧? 冗談じゃないよという声もまだまだ多い中、肌ケアやヘアケアを含むメンズコスメ市場が、日本国内でもジワジワと広がりを見せている。


美容関係者が言う。


「女性向けの化粧品市場は縮小気味です。コロナの影響でマスクの習慣が定着し、メイクをする機会が減ったせいです」


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その言葉を裏付けるように、経済産業省の統計によれば、コロナが始まった2020年の化粧品全般の出荷額は前年より16.1%も減り、約1兆4700億円。右肩上がりを続けてきた化粧品市場では、実に9年ぶりのマイナスとなった。


一方で、男性化粧品、いわゆるメンズコスメに限って言えば、売り上げが伸びているのだという。


市場調査会社インテージによれば、17年のメンズコスメ市場は約330億円、18年が336億円、19年が357億円。そして20年のコロナ禍で女性化粧品の売り上げが鈍化する中、メンズコスメは373億円と上積みする。さらに21年には400億円を突破したという。


なぜメンズコスメは伸び続けているのか。先の美容関係者が解説する。


「コロナ禍のリモートワークの影響で、自分の顔をアップで映す機会が増えました。最近のIT機器は高画質対応。肌荒れや吹き出物はもちろん、髪の毛や眉毛のボサボサまでリアルに映します。手入れの必要性を感じた男性たちがメンズコスメに手を伸ばしているのです」

大手の新規参入が相次ぐ

加えてオシャレな壮年やシルバーが増えたのも大きいという。ファッション業界関係者が語る。

「一昔前の中高年といえば、いわゆるドブネズミルック。グレーか紺系のしみったれた背広姿で加齢臭まで漂わせ、なんとも陰気でした。定年後なら、なおさらです。ところが近年は定年後も趣味や仕事に活発で、中には新たな恋に落ちる男性も…。となれば、健康的な肌を保ち、加齢臭を消して、いい香りを保とうとするのも当然。現代の〝新エチケット〟になりつつあります」


メンズコスメの伸びを象徴するかのように、新規参入も相次ぐという。


例えば、シニアの歩く力をサポートするサプリメント「ロコモア」や、総合健康サプリ「セサミン」などで知られるサントリー系列の健康食品会社、サントリーウエルネス(東京)は今年3月、男性用スキンケア「ヴァロン」の発売に乗り出した。


化粧品メーカー関係者が言う。


「飲料に強いサントリーらしく、ウイスキー原酒の熟成に用いる樽に使うオーク材から抽出した『ウイスキー樽材エキス』や『ウーロン茶エキス』を配合するスキンケア商品は、男性の肌荒れや乾燥、べたつきに抜群の効果があるというキャッチフレーズで売り出しています。40代以上からの壮年層、シニア層をターゲットにし、約1カ月分を3300円(税込)で通信販売。今年は約3億円、3年後には50億円の売り上げを目指す強気路線です」


富士フイルム(東京)の化粧品進出は2006年だが、男性化粧品は19年からとまだ新しい。写真分野で培った最新テクノロジーを駆使したアンチエイジング化粧品「アスタリフト」が人気を集めている。


となると、老舗の化粧品大手はメンズコスメでどう動いているのか。

手始めに“大手百貨店”へ

資生堂(東京)は男性肌の乾燥、油症、肌荒れを研究し、それを緩和するメンズ商品を「SHISEIDO MEN」(資生堂メン)シリーズとして03年から発売している。今年は18年ぶりに新たなメンズブランドを立ち上げ、「サイドキック」シリーズを新発売。化粧品メーカー関係者が続けて解説する。

「資生堂のターゲットは、メンズコスメ市場が急ピッチで伸びている中国です。特に美容に関心の高い10代から25歳までのZ世代にも購入しやすい価格設定になっています」


「サイドキック」シリーズに関しては、日本や他のアジア地域での本格発売は、中国での販売動向を踏まえてから見極めるという。


ところで、メンズコスメの初心者やオジサン世代は手始めにどうすれば良いのだろうか。


「大都市部なら百貨店です。敷居が高そうに見えますが、飛び込んでみると初心者にも丁寧に説明してくれます。現在はどこの百貨店でもメンズ美容に力を入れているため、ウェルカム状態。特に新宿の伊勢丹メンズ館などはコーナーを拡大して、最新のAIミラーを使った肌測定サービスや、男性用美顔器も扱っています。地方でメンズコスメが豊富なのは、大手薬局チェーンやドン・キホーテですね」(同)


そして、こう続ける。


「コスメで手入れをすれば、肌ツヤやハリがまったく異なり、表情も別人のようになります。本来は高齢者ほど肌の手入れは必要不可欠なのですが、習慣のないシニア男性には、なかなか入りにくいかもしれません。しかし考えてみてください。今の時代、歯磨きしない人はほとんどいません。肌の手入れも歯磨きとまったく同じ身だしなみです」


それでも面倒と思う人は、まずは洗顔からチャレンジ。鏡の中に、あなたではない、イイ男が現れれば新たな恋が芽生えるかも…?