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『ニジマス』北海道夕張市/ペンケマヤ川産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

北海道は夕張にて、三菱石炭鉱業大夕張鉄道の客車と念願のご対面をした前回。釣りの方も、シューパロ湖上流の夕張川でアメマスとご対面が果たせ、極めて満足な1日となりました。

さてここで、夕張でどうしても行っておきたい場所がもう1つありまして…。と言うのも、個人的見解で誠に恐縮なのですが、なぜ夕張に惹かれたのかというと、高校生の時分に図書館で目にした炭鉱盛んなりし頃の、活気溢れる夕張の街の写真がきっかけなんですな。現在の街に当時の面影はほとんどありませんが、その頃に建てられた共同浴場〝宮前浴場〟が今も健在で現役という話を耳にし、これは是が非でも入らねば、と思っていたのでした。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

ということで、アメマス釣りと客車での感動タイムを終え、開店の15時すぎに宮前浴場に到着。料金を払って入ると、一般的な町の銭湯とは雰囲気の異なる、シンプルな〝これぞ共同浴場〟といった雰囲気に気分は高揚。開放感のある浴室、広いステンレス浴槽の澄んだ湯は実に気持ちがよく、湯に浸かるうちに活力が湧き、「もうひと勝負するか」という気持ちになってまいりました。念願の宮前浴場を体験できた嬉しさに加えて爽快な湯上がり感の中、せっかくここまで来たのだし、夕張川本流でニジマスを狙ってみるか…と足を向けてみることにします。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

「いるとすればあそこだな…」

すぐ近くを流れる夕張川のほとりに着くと、先ほどのシューパロ湖上流とは打って変わって、湖より下流のこちらは水量が多く、強い流れで竿の出せそうなポイントはかなり限られます。それでも「せっかくだし、やってみなけりゃ分からんな」と竿を出しますが、強く激しい流れに翻弄されるばかりで魚信はありません。まあ、アメマスは釣れたし(前回)、何よりも念願の宮前浴場にまで入れたのですから「今日は上出来」と自分を納得させ、竿を納めることにしました。

帰り道。夕張に名残惜しさを感じつつ、国道452号線を走りながらカーナビに目をやると、小さな川を表す青く細い線が目に入りました。「本流がダメでも支流ならイケるか…」衝動的に支流に向かう細道に入り、丘を下ると畑の中を流れる用水路のような支流の脇に出ました。渓流釣り場としての雰囲気はイマイチですが、なにせ夕張川の支流ですから可能性がないわけではありません。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

沈みゆく太陽に焦りつつ、急いで安物の渓流竿を取り出して仕掛けをセット。エサのミミズをハリに付け、流れに入れますがアタリはありません。「やはりそう簡単にはいかないか」と、あらためて冷静になり川を見ると、緩やかなカーブの外側となる橋のたもとに、流れが当たって少し深くなった箇所が目につきました。「いるとすればあそこだな…」とそっと仕掛けを沈めると、グリグリッ! とアタリ。反射的に竿を煽ると元気な手応えで踊り出たのは、25センチほどのニジマスです。決して型がよいわけではありませんが、半ば諦めていただけにこれは嬉しい1尾です。

日本全国☆釣り行脚
ニジマス(C)週刊実話Web

スレていない豪快なアタリ

この1尾で満足…なのですが、欲張りなワタクシ。試しに木立ちの中の流れにも仕掛けを入れてみると、いきなりグンッ! と力強いアタリに続いて、ギューンッと竿が絞り込まれました。構えていなかったので、少々焦りながら強引に抜き上げた仕掛けには、30センチに少し足りない肥えたニジマス。釣り人があまり入らないのか、全くスレていない豪快なアタリでした。この2尾で、もう十分に満足。薄暗い中で竿を畳み、それでもまだ、素晴らしき夕張に後ろ髪を引かれつつ帰路に就くことにします。

ニジマスのムニエル
ニジマスのムニエル (C)週刊実話Web

帰宅後、ニジマスはこの魚の定番料理でもあるムニエルにして、最高の1日に独りで乾杯です。用水路のような川とはいえ、夕張の自然の中を流れる川のニジマスはクセもなく美味。冷えたビールをクーッとやって目を瞑れば、念願の宮前浴場、そしてその後ろに並ぶ炭鉱住宅の風景が鮮やかによみがえります。

それにしても、釣りをしているとよく思うことですが、あらためて〝折れない心〟といいますか、諦めずに粘ってみると、時にはよいこともあるものだなぁ、と思えた今回。そして、少ないながらも炭鉱華やかなりし頃の建造物には独特のオーラがあり、雄大な自然と相まって、1日では到底回りきれないほどの夕張の魅力の一端に触れることができ、再来を誓う釣行となったのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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