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『アメマス』北海道夕張市/夕張川産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

連日のすさまじい酷暑から逃げるべく、北海道に来ております。広大な大自然が広がる北海道は、釣り人にとって実に魅力的な地と言えます。もちろん、大自然以外にもさまざまな魅力があります。

個人的な話で恐縮ですが、30年ほど前、まだ高校生の時分に炭鉱関連の資料を図書館で目にして以来、夕張というところに一度行ってみたいと思っており、結局、何やかやと30年間行けずにおりました。特に大夕張地区を走っていた三菱石炭鉱業大夕張鉄道線(1987年廃止)に強烈に惹かれ、廃止前に行っておきたかった、と悔やんだものでした。とはいえ1987年といえば、まだ小学生の時分ですから、どだい無理だったのでしょうけれど。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

今回は何と、その三菱石炭鉱業鉄道の列車が大夕張の地に保存されているという話を耳にし、これは是が非でも足を延ばしてみようということになりました。あ、もちろん釣りもやりますので…。

さて、大夕張地区に来てみると、資料に載っていた炭鉱盛んなりし頃の街並みはどこにもなく、閑散とした人けのない街は、聞いていたとはいえ想像以上です。ひとまず、もう1つの目的でもある釣りをするべく大夕張の集落を抜け、〝シューパロトンネル〟へと入ります。完成から10年余りと、まだ新しい2310メートルのトンネルを出ると、右手の眼下には雄大なシューパロ湖が広がります。交通量のほとんどない国道をさらに走ると、やがて夕張川が並走するようになりました。

“ちゃんとしたの”がいる雰囲気

「どこか川に下りられるところはないものか」と川沿いの国道を走り続けますが、簡単に下りられそうなところはなく、加えて、いつもの作業着&長靴という軽装ですから無理もできません。熊も怖いし、さてどうしたものか…。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

考えながら走るうちに、川が国道のすぐ下を流れる箇所にさしかかりました。「そうだ、上からブチ込んでみよう」と、車から降りて川を見てみますと、カーブの外側が足下にぶつかり深みを形成しておりよい感じです。

「これは間違いねぇ…」

急速に逸る気持ちを抑えつつ、いそいそと安物の渓流竿を取り出します。道糸を長めに結び、オモリ&糸&ハリの簡単な仕掛けをセット。ミミズを付けて、手前の柵越しに仕掛けを入れます。背の高いやぶでポイントは目視できず、感覚に頼りながらゆっくりと竿先を下げていくと、着水の感覚に続いてオモリが着底した感覚が伝わりました。無事、川底に仕掛けが届いたことに安堵していると小さなアタリ。釣れてきたのは小さなウグイです。うーん、もうちょっと〝ちゃんとしたの〟がいる雰囲気なのですが…。その後も釣れるのはウグイばかりで、やぶ越しに川を見ながら歩いてみることにします。しばらく歩くと淵尻から平瀬に変わるあたりで、適度な水深とともに大岩が沈む箇所が目に入りました。

「今度こそ間違いねぇ…」

念願のご対面を終え晩酌へ…

静かに大岩の陰に仕掛けを入れると、今までのウグイとは違う、ゴンッ! ゴゴンッ! と力強いアタリが出ました。一呼吸置いて竿を煽ると竿が大きく弧を描いてハリ掛かりです。ウグイとは明らかに違うパワフルな引きをいなしつつ、玉網は届かないので、〝カツオの一本釣り〟よろしく「エイヤッ!」とぶっこ抜いて一丁上がり。釣れたのは35センチほどのアメマスでした。この1尾で気をよくし、同じようなポイントで一回り小振りなアメマスを追加。まだ釣れそうな気配でしたが、2尾もあれば晩酌の肴には十分なので、これで竿を畳むことにしましょう。

アメマス
アメマス (C)週刊実話Web

来た道を引き返し、長いシューパロトンネルを抜けると大夕張の集落となり、ほどなく右手に今回のもう1つの目的でもある南大夕張駅跡が見えてまいりました。誰もいない広場に鎮座する客車たち…。念願のご対面です。引戸を開けて車内に入り、板張り剥き出しの座席に着席。木と油とニスの混じった独特の懐かしさを感じさせるにおいに包まれて、しばし放心。今にも走り出しそうな、当時のままの状態で保存されていたことが奇跡に近いようなもので、嬉しさを通り越して感激すら覚えるこのひととき。大切に使われ、そして今まで大切に保存をされていた地元の方々には深謝であります。

アメマスのバター醤油ソテー
アメマスのバター醤油ソテー (C)週刊実話Web

さて、話を魚に戻して、持ち帰ったアメマスはバター醤油ソテーにして晩酌です。というのも、アメマスはマス類の中でもかなり淡白なので、濃いめの味付けがいいんですな。〝ブラックニッカ ハイボール香る夜〟をやりながらアメマスをパクリ。目を瞑れば、夕張川の力強い流れから躍り出るアメマス、強烈な郷愁感の客車などなど、ほんの一端とはいえ夕張の素晴らしき魅力が浮かび、なんとも思い出に残る1日となったのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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