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いつもむちゃくちゃなふたりの芸人~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

最近、若手お笑い芸人が出演しているテレビ番組を見ると、みんな真面目なコメントばかりですね。そこいくと、俺が22〜23歳の頃から付き合いがある西川のりおとザ・ぼんちのおさむはむちゃくちゃですよ。

16年ほど前、俺、のりお、おさむの3人が旅番組で沖縄・西表島へ行ったんです。石垣島から西表島行きの船で向かう途中、ディレクターから「船から西表島に上陸するところで1人ずつコメントをください」と指示があった。俺が先に下船し、次はのりおの番。「ツッタカター、ツッタカター」と感想も言わずに、200メートルくらい勝手に歩いて行く。そして、カメラの方を振り返り「誰か止めてくれ!」。「止めてくれも何もお前が勝手に行ったんやろ」とツッコむと「何が?」。「ディレクターから『西表島に着きました。ここから名所を紹介します』と言えと指示されてたやろ」。そうしたらまたも「ツッタカター」と言い出した。「だから、話を聞け」と諭すと「ツッタカターは、わかったの意味や」。

その後、島内をロケバスで回りながら、撮影が始まった。島で一番美味しいという沖縄そば屋で一口食べて感想をコメントすることになったんです。俺は「コシがあって、今まで食べた中で一番美味しいですわ」。レポーターから味の感想を求められたおさむは「おさむちゃんで〜す」。困ったレポーターが「そうじゃなくてですね。沖縄そばの味はどうですか?」と聞き返すと、「おさむちゃんで〜す」とまたもギャグで返したんです。するとレポーターが「飛ばします」と冷静にあしらってました。慌てたおさむは「美味しいです。美味しいです」と必死に取り繕っていましたよ。

エンドレスな“ギャグ”と“ボケ”

のりおはのりおで案の定、「ツッタカター」とボケる。レポーターが「1人はまともですが、あとの2人は意味不明です」と冷静に状況説明してたからさらに面白い。そうしたら、その後ろで「おさむちゃんで〜す」「ツッタカター」と2人はずっとボケていた。それを見て「さて、あと何分持ちますかね」とレポーター。さすがに疲れた2人が「もう止めてくれ。喉がカラカラになるわ」と泣きを入れていました。

2人とは楽屋でもしょっちゅうしゃべっていましたね。ある日、野球の話をしていたら、なんばグランド花月の係の人が「のりおさん、出番です」と呼びに来た。のりおは「おさむ、代わりに出てくれ。わからへんやろ」。「わかった。代わりに俺が出る」とおさむ。係の人が「わかりますって」と必死に止めていましたね。

また、ある後輩が「のりおさん」と呼び掛ければ、「誰が郷ひろみや!」と決まってボケますよ。話をふると、スルーせずにずっとボケてますね。休憩せえ、と言いたくなるくらいですよ。お金を払わないと申し訳なくなるくらい面白い。

今のテレビ番組でこんなにむちゃくちゃな芸人は見ないでしょ。たとえば、3人でCMに出れば、2人は「おさむちゃんで〜す」「ツッタカター」と後ろでずっとボケてますよ。俺がきっちり商品説明をする。俺じゃなくても、その企業の社長さんでも良いでしょうね。

コロナに戦争と暗いご時世だからこそ、広告代理店の方、こんなCMはどうですか(笑)。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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