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北朝鮮・経済復興に希望の光?ロシアと蜜月関係継続で“キーマン”に躍り出る!?

Yuriy Boyko_Ukraine
(画像)Yuriy Boyko_Ukraine/Shutterstock

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は開始から半年を超え、いまだに激しい戦闘が続いている。世界が「新冷戦」の様相を呈する中、北朝鮮の金正恩総書記は首尾一貫してロシアのプーチン大統領を支持してきた。

「北朝鮮のロシア傾斜は露骨です7月13日にはロシアが制圧したウクライナの東部地域で、親ロシア派勢力が一方的に独立を宣言した『ドネツク人民共和国』と『ルガンスク人民共和国』を国家として承認し、外交関係まで樹立しています。ウクライナは北朝鮮の核・ミサイル開発を支えた有力国の1つでしたが、両地域の独立を容認できないため、北朝鮮との国交を断絶しました」(軍事アナリスト)

今後の核・ミサイル開発における技術移転については、ウクライナを経由せず、直接ロシアに協力を要請することになるだろう。

北朝鮮とロシアの蜜月関係は、これにとどまらない。8月15日の「解放記念日(日本統治からの解放)」には、プーチン氏と正恩氏が祝電を交わし、互いにエールを送り合っている。

「ロシアの本音としては中国に軍事支援を要請したいところですが、中国は欧米の経済制裁を恐れて慎重な姿勢を崩していません。そこでプーチン氏は中国を諦め、北朝鮮に連携を求めたのです。おそらくプーチン氏は11月7日の『ロシア革命記念日』に、正恩氏をモスクワに招待するでしょう。正恩氏は東側陣営のキーマンになったつもりで、舞い上がってしまうかもしれません」(外交関係者)

義勇兵10万人への見返りは…

そもそも北朝鮮という国家は、成り立ちからしてロシア(旧ソビエト連邦)と関係が深い。正恩氏の祖父であり、建国の父である金日成主席は、かつて旧ソ連軍の大尉で、解放後に北朝鮮政府の中核となった経緯がある。父の金正日総書記も、旧ソ連領内で生まれたという説が有力だ。

「北朝鮮駐在のロシア大使がロシアの新聞に語ったところによると、北朝鮮政府がドネツク、ルガンスク両地域の復興のために、現在ロシア国内で働いている北朝鮮の労働者を1000人ほど派遣し、戦禍の修復やインフラ建設に当たらせる計画があるそうです」(国際ジャーナリスト)

5月5日にはロシアの著名な軍事専門家が、ロシアの国営テレビ『チャンネル1』で「10万人の北朝鮮義勇兵がウクライナに参戦する準備ができている」「北朝鮮将兵は対砲火戦で多くの戦闘経験を持っている」と、北朝鮮のウクライナ参戦を示唆している。

ウクライナでの戦闘が長期化する中、ロシアと北朝鮮は持ちつ持たれつの関係にあるという。

「ロシアはウクライナ東部および南部を押さえつつありますが、占領した土地を維持し、かつインフラを整備していく兵力と労働力が決定的に不足している。一方、北朝鮮は国連の経済制裁とコロナ禍、そして洪水による凶作という三重苦によって、経済がいよいよ崩壊へと向かっている。そこで北朝鮮は、ウクライナに義勇兵10万人を送ることの見返りとして、ロシアに原油の供給を願い出ているのです」(同)

韓国に対する不快感あらわに

米国の朝鮮問題研究家は、北朝鮮の行動は国連の対北制裁に違反すると警告を発している。しかし、現在の北朝鮮は、平壌の高級マンションでさえ窓に明かりが灯らないという悩ましい電力不足に直面しており、このままだと目前の厳冬を越すことができない。

「北朝鮮からの労働者受け入れも北朝鮮への原油輸出も、ともに国連の制裁決議違反ですが、もはや国連安保理(安全保障理事会)は機能不全に陥っているので、ロシアが勧告を無視しても何のおとがめもないという状況。それを見越してやりたい放題なのです」(同)

8月10日には正恩氏の実妹である金与正党副部長が、韓国との対決姿勢を鮮明にした。同日に開かれた「全国非常防疫総括会議」で、国内に新型コロナウイルスが流入したのは、韓国から脱北者が送り込んだビラなどが汚染されていたことによるものとして、「致命的な報復」を宣言したのだ。

「与正氏は続いて19日にも、朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』を通じて韓国への不快感をあらわにしている。韓国の尹錫悦大統領が、北朝鮮が実質的な非核化措置に転向した場合、幅広い支援を行うと提案したことについて、『実現とはかけ離れた愚かさの極致』とこき下ろしたのです」(北朝鮮ウオッチャー)

与正氏は提案を受け入れられない理由として、直近の米韓合同軍事演習(8月22日〜9月1日)などを挙げ、「侵略戦争の演習を強行する恥知らず。人間として嫌いだ」と、尹氏を名指しで非難した。いつにも増しての強い態度は、ロシアの後ろ盾を得た北朝鮮の自信の表れとも考えられる。

虎の威を借る狐か、新冷戦時代のキーマンか。いずれにしても北朝鮮の暴走は日本にとっても大きな脅威であり、一段と警戒を強めなければならない。

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