
千代の富士「体力の限界…。気力もなくなり、引退することになりました」~心に響くトップアスリートの肉声『日本スポーツ名言録』――第16回
力士のニックネームはさまざまあれど、千代の富士の「ウルフ」ほどキャラクターを表し、幅広い人々に親しまれたものはないだろう。その眼光鋭い顔付きと筋肉質の体、スピード感のある取り口は、唯一無二の存在感を放っていた。
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1991年の夏場所、全休からの復帰戦となった千代の富士は、初日の西前頭筆頭・貴花田(のちの貴乃花)との取組で、まわしを取ることもできず一方的に寄り切られた。
そして3日目、小結の貴闘力にとったりで敗れると、その夜に開かれた緊急会見で「体力の限界」といったん言葉を詰まらせ、絞り出すようにして「気力もなくなり、引退することになりました」と続けたのだった。
話はここから10年前にさかのぼる。1981年の相撲界は空前の〝ウルフフィーバー〟に沸いていた。千代の富士は東関脇として迎えた初場所で、横綱の輪島や若乃花(2代目)を破り、初日から勝利を重ねていた。
そして、全勝で迎えた千秋楽。相手は当時「強すぎて憎たらしい」とまでいわれた横綱・北の湖で、こちらは13勝1敗。しかし、千代の富士は初優勝を懸けた大一番で、北の湖につり出しで敗れてしまう。
この敗戦により14勝1敗で並んだ両者は、優勝決定戦を迎える。千代の富士はここでも正面からぶつかっていくと、一瞬、つられそうになりながらもこれをこらえ、上手出し投げで北の湖を土俵に転がした。
肉体改造で自らを鍛える
当日のテレビ中継は平均視聴率52.2%、瞬間最高視聴率65.3%(関東地区)。これは視聴率調査が開始されて以降、今なお大相撲の最高記録となっている。これで大関に昇進した千代の富士は同年7月の名古屋場所、やはり千秋楽で北の湖を破って二度目の優勝を果たし、ついに横綱の座をつかんだ。
のちに千代の富士は「若貴ブームは2人だけど、ウルフフィーバーは俺1人」と冗談交じりに語っているが、これは誇張でもなんでもない。この頃、テレビの前で家族そろって千代の富士を応援することは、よく見られた光景だった。
千代の富士は現役時代、身長183センチ、体重127キロとされている。身長でいえば力士全体の平均ぐらいで、筋肉隆々の体つきはむしろ他の幕内力士より大きく見えることもあった。
それでも「小兵」といわれることが多いのは、幕下時代の体重100キロにも満たないイメージによるところが大きい。千代の富士は先天的に両肩関節のかみ合わせが浅く、さらに投げに頼った強引な相撲ぶりもあって、入幕前に10回以上も脱臼を繰り返していた。
なかなか出世できないため手術も考えたが、医師から「手術すると半年は稽古ができない」と言われて、肉体改造に励むことになる。本人が「一にも二にも腕立て伏せ。それに尽きる」と語ったように、毎日500回の腕立て伏せを欠かさず、そのため畳は4カ月もするとボロボロになったという。
故障で低迷した時期には煙草の本数が増えて、1日3箱を吸うヘビースモーカーだったというが、心機一転して禁煙を決意した際、50万円もする金のダンヒルのライターを隅田川に投げ捨てたとの逸話もある。
絶対的な強さを誇っていた…
そうして筋肉のよろいをまとった千代の富士は、体脂肪率10%台といわれた。一般男性なら、外見上はほとんど脂肪が感じられないレベルだ。従来の「あんこ型」や「そっぷ型」の力士を打ち破る千代の富士の大活躍に、人々は新時代の力士像を見て、それが〝ウルフフィーバー〟の原動力ともなった。横綱昇進後は決して順風満帆ではなく、しばらく故障に悩まされた千代の富士だが、30代に入ってから本格的な全盛時代が訪れる。88年には、夏場所から九州場所にかけて53連勝を記録(歴代3位)。翌年には通算968勝の最多記録(当時、現在は歴代3位)を達成して、相撲界で初となる国民栄誉賞を受賞した。
ガチンコ力士といわれる寺尾は85年の秋場所、千代の富士との初対戦について「立ち合いで当たった瞬間、まるで鉄板にでもぶつかったような手応えが返ってきて、とても人間とは思えなかった」と話している。
その後、89年の初場所では外掛けで千代の富士を破り、一矢を報いた寺尾だが、勝ったのはこれっきり。その後の取組では、つり上げられて土俵に叩きつけられる完敗も喫している(通算成績は寺尾の1勝16敗)。
それほど絶対的な強さを誇った千代の富士だけに、横綱としてのプライドも人一倍あっただろう。しかし、ついにそれが保てなくなった。引退の言葉からは、その無念さが垣間見えるようである。
《文・脇本深八》
千代の富士 PROFILE●1955年6月1日生まれ。北海道松前郡出身。第58代横綱。幕内戦歴807勝253敗144休(81場所)。幕内最高優勝31回。現役引退後は九重部屋を継承。2016年7月31日、すい臓がんのため死去。
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