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『熔ける 再び そして会社も失った』著者:井川意高~話題の1冊☆著者インタビュー

『熔ける 再び そして会社も失った』幻冬舎/1760円

『熔ける 再び そして会社も失った』幻冬舎/1760円

井川意高(いかわ・もとたか)
1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年に大王製紙に入社。会長だった2010年から2011年にかけて、シンガポールやマカオにおけるカジノでの使用目的で子会社から総額約106億8000万円を借り入れていた事実が発覚。2011年11月、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。

――2011年、カジノでの使用目的で総額106億8000万円の資金を子会社から借り入れ、逮捕されました。当時どんな心境だったのでしょうか?

井川 特捜部からコンタクトがあった時は、さすがに驚きました。逮捕そのものは、数回任意の取り調べを受けた後だったので「ああ、とうとうその日が来たな」といった程度の感想でしたね。小菅(東京拘置所)での1カ月間の取り調べも、今ではいい思い出です。刑務所での様子は、ぜひ本書をお読みください。皆さんが想像されるより穏やかで、単調な日々です。ギャンブルをしたいとか酒を飲みたいとかの執着は、まったくありませんでしたね。

――刑期満了後に向かった韓国のカジノで3000万円の種銭を元手に9億円まで増やしたとか。なぜまたギャンブルに手を出したのですか?

井川 誤解されることがあるのですが、私は〝賭博罪〟で逮捕されたのではありません。会社法960条違反、即ち〝特別背任罪〟で有罪となったのです。まぁ、その主な原因となったのはギャンブルですが(笑)。酒が原因で肝硬変になり入院した人が、退院後にも酒を飲み続けるケースってありますよね。やはり私は、〝ギャンブル依存症〟なのかもしれません。しかし、今は燃え尽きてしまい、ギャンブルに灼かれるような刺激を求めることはなくなりましたね。

まるで実写版『半沢直樹』のよう

――大王製紙の創業家追放劇はまるでドラマ『半沢直樹』のようだったとか。

井川 今回、株主総会当日朝に会長辞任を発表した佐光正義社長(当時)が、社外監査役である山川洋一郎弁護士を参謀として、創業家である井川家を放逐しようとしました。そして、こちらが感心するほど悪辣な手段を駆使して、井川家追放に成功しました。具体的な内容は、ぜひ本書に目を通していただきたいと思います。佐光氏は、10年の後、社内政治によって今度は自分が会長辞任を余儀なくされました。皮肉なものです。

――実刑が確定したとき、安倍元首相から激励の電話があったそうですね。

井川 今年4月にお会いしたのですが、その3カ月後にあのようなことになるとは…。数日間言葉が出ませんでした。本当に誰にでも気さくな、ユーモア溢れる方でした。そして、誰よりも日本の行く末を案じておられた政治家でした。ご冥福をお祈りします。

今後はこれまでの私の経験をお伝えしようと、オンラインサロンを始めようと考えています。8月中に開設する予定ですので、興味のある方はご覧になってください。

(聞き手/程原ケン)

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