『明日、野球やめます 選択を正解に導くロジック』集英社/1650円
鳥谷 敬(とりたに・たかし)
1981年6月26日生まれ。東京都出身。聖望学園高校、早大を経て、2003年阪神に入団。NPB歴代2位の1939試合連続出場、13シーズン連続全試合出場、遊撃手として歴代最長の667試合連続フルイニング出場記録を樹立。2020年にロッテに移籍、2021年引退。現在は、野球解説や社会人野球部の指導を行う。
――阪神でプレーされた16年間で一番印象に残っているシーズンはいつですか?
鳥谷 主に3番を打っていた2010年ですね。このシーズンからチームに加わったマット・マートンが、1番打者としてイチローさんの日本記録を塗り替えるシーズン214安打をマーク。2番打者の平野恵一さんも調子がよく、自分はランナーがいる状態で打席に立つことが多かったんです。だから、ヒットを打てばタイムリーになるような感覚があったし、他にもレギュラーに定着してから試行錯誤し続けてきたことがいろいろとかみ合って、飛躍したと思えるシーズンでした。
――2020年に阪神からロッテに移籍。阪神との違いはありましたか?
鳥谷 両チームともホームゲームでは大勢のファンが詰めかけてくれますが、阪神はビジターでもホームと変わらないほどファンが後押ししてくれていました。これは移籍してから気づいたこと。試合に出続けている時は自分のことで精一杯で、ファンのありがたさに気づく余裕がなかったのです。出場機会が減った時、あらためてファンの方に力をもらっていたのだと気づかされましたね。
マスコミからの注目度も阪神とロッテでは大きく違います。例えば阪神では、打っても打たなくてもコメントを求められますが、ロッテではそれがありません。広報の方がSNSなどを駆使して自ら情報を発信するというのも、移籍して初めて経験しました。
後悔のない引退の選択
――2021年、史上44人目となる通算1000得点を達成し、引退を表明しました。どんな気持ちでしたか?
鳥谷 当時は試合に出るか出ないかが、現役を続行するかどうかの唯一の判断材料でした。試合に出ることができない状況になったことで、引退を決めました。自分にできることをすべてやりきったと感じているので、後悔はまったくないし、引退という選択が間違っていたとも思っていません。
――今年社会人野球チームのコーチに就任されました。将来、プロ野球の監督になる可能性はありますか?
鳥谷 やる、やらないは別として、やりたいとは思っていませんね。ただ、今後やるべき理由が出てくるかもしれないので、可能性をゼロと決めつけているわけでもありません。引退後は野球と関わりのない仕事も経験させてもらっていて、その中でできないことは〝今後やること〟の選択肢から外そうと考えていたんです。でも意外とできてしまって。
嬉しいことですが、選択肢が増えて迷ってしまいます(笑)。
(聞き手/程原ケン)
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