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北朝鮮がウクライナ侵攻に本格参戦か!? ロシアへ義勇軍“10万人派遣”の見返りは…

ロシアのウクライナ侵略戦争に極東アジアが巻き込まれそうだ。ポーランド国防省は7月27日、韓国とFA50戦闘攻撃機48機、K2戦車980両、K9自動榴弾砲648両の導入契約を締結したと発表した。これらの兵器をウクライナ軍へ供与するためだ。


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「これまで北朝鮮の金正恩総書記は、ウクライナが韓国に兵器の支援を要請していることについて沈黙してきました。今回のポーランドに対しても、何ら非難をしていない。しかし、北朝鮮もロシアへの軍事支援を意図しているとみられ、油断することはできません」(外交関係者)


8月5日、案の定、米紙『ニューヨーク・ポスト』が〈北朝鮮はロシアを支援するために、義勇軍10万人を送る準備をしている〉と報じた。


同紙によると、ロシアの国防専門家イゴール・コロチェンコ氏が5月5日、ロシア国営テレビ『チャンネル1』に出演した際、「10万人の北朝鮮義勇軍が(ウクライナに)来て、紛争に参加する準備ができている。彼らは対砲兵戦で多くの戦闘経験を持っている」と解説したという。


「さらにコロチェンコ氏は、『北朝鮮がウクライナのファシズムに対して戦う国際的な義務を果たしたいと表明するなら、われわれ(ロシア)はこれを受け入れるべきだ』と主張しているそうです。ただ、同紙は〈ロシアからこうした話が流れ出るのは、ウクライナへの侵略戦争を続行するに際して、あまりに兵や弾薬などが不足していることを暗示しているからでは?〉と付け加えています」(同)

中国の要請で兵が動く

北朝鮮は7月13日、ウクライナの東部地域で、親ロシア派が一方的に独立を宣言した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を国家として承認した。これら人民共和国の独立を承認するのは、ロシア、シリアに続いて北朝鮮が世界で3番目だった。この決定を受けて、ウクライナは北朝鮮と断交している。

「北朝鮮軍は、ほぼ全面的にロシアで開発された兵器を採用しており、戦略や戦術面でも同国との交流から多くを得てきました。もし参戦すれば、即ロシア軍の指揮下に入れます」(国際関係アナリスト)


北朝鮮には、ほかにも気になる情報がある。朝鮮中央通信は8月9日、米国のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問をめぐって、朝鮮労働党が米国を非難し、中国共産党を支持する書簡を送ったと報じた。


北朝鮮は、ペロシ議長の8月4日の板門店訪問にも反発を強めており、台湾問題に乗じて改めて中朝連携をアピールした格好だ。


「中国の核心的利益になっている台湾に、ロシアのプーチン大統領は関心がない。ですから、台湾有事で実際に動くのは北朝鮮軍でしょう。北海道周辺で武力示威行動を取れば、自衛隊はそちらに兵力を割かざるを得ませんからね。中国の要請なら北朝鮮は断れません」(国際ジャーナリスト)


仮にウクライナ侵略戦争が終結し、東部地区が安定してインフラ再建が始まれば、北朝鮮は労働者も派遣するだろう。北朝鮮の駐ロシア大使は、すでにドネツク、ルガンスク両人民共和国大使とのモスクワ会談を終えている。


「北朝鮮にしてみれば、外貨を稼げる絶好のチャンス。ロシア側としても、食事や睡眠をろくに取らないで働く労働者は歓迎すべきところです」(同)

ロシアのICBMが目当てか

今や北朝鮮は中ロ両国の先兵と化しているが、国際平和という観点からすれば完全なる暴走だ。さらに、日米韓に対する揺さぶりとして、核実験を画策しているのだから始末に負えない。

ただし、北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)については、大気圏再突入の状況を再現できる実験装備がないことや、最終的な軌道を追跡する航空機や艦船を保有していないことなどから、専門家の間では命中精度の低さを指摘されている。


「弾頭の重量についても米国は約100キロ、中国は約300キロまでの小型化に成功していますが、おそらく北朝鮮は500キロ程度までしか達成していない。そのため、確実に核弾頭を搭載できる前近代的な大型ミサイルしか飛ばせないのです」(軍事ライター)


もしかすると北朝鮮はウクライナへの義勇兵派遣と引き換えに、ロシアの次世代型多弾頭ICBM『サルマト』の技術移転を要請するかもしれない。


「サルマトは今秋までに実戦配備される見通しで、同ミサイルの技術を北朝鮮に供与することに障害はない。それによって『火星15』や『火星17』を迎撃しにくい多弾頭型に改良すれば、ロシアは得難い同盟国を得るばかりか、対米戦略の先兵として北朝鮮を活用することができるのです」(同)


ウクライナ侵略戦争の長期化は、中朝ロという核使用をためらわない国家に囲まれた日本にとって、安全保障上の脅威がますます増大することを意味している。