
王貞治「みなさまのおかげで756号を打つことができました」~心に響くトップアスリートの肉声『日本スポーツ名言録』――第15回
「世界の王」といえば、これまで何冊もの伝記が出されるほどで、もはや歴史上の人物のように感じる人も少なくないだろう。それも現役時代から変わらぬ実直で高潔な振る舞いがあってのこと。まさに「生きる伝説」なのである。
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1977(昭和52)年9月3日19時10分、後楽園球場。集まった観衆はもちろん、生中継のテレビ放送が始まったばかりの全国のお茶の間でも、普段は野球に興味がないような人々までが、世界的偉業達成の瞬間を見逃すまいと固唾を呑んでいた。
マウンドにはヤクルトの右腕・鈴木康二朗、そして打席には巨人の王貞治。
鈴木がスリークォーターのフォームから投げ込んだフルカウントからの6球目。ファンの期待が後押ししたのか、それとも王の気迫が引き寄せたのか、決め球のシンカーは甘く高めに浮いて棒球となり、王のバットがこれを捉える。
打球は一直線にライトスタンドへ飛び込んでいった。
ハンク・アーロンの世界記録を抜く756号本塁打に、5万人の観客は立ち上がって拍手を送った。この時のために用意されたくす玉が割られて、球場内に紙吹雪が舞い、場外では花火が打ち上げられた。
王は軽く両手を上げて歓声に応えると、次の回には外野席のファンにも感謝を伝えるため、ライトの守備に就いた。
試合を残した散々な退任会見
8対1で快勝した試合後に行われた祝福セレモニーで、王は両親に「37年間、親孝行できなかった代わりの僕のささやかな感謝の気持ち」と、自身に贈られた「祝756」と花で描いたフラワープレートを手渡した。そして、グラウンドの照明が落とされ、マウンド上でスポットライトを浴びた王は「みなさまのおかげで756号を打つことができました」と、感謝の言葉を口にしたのだった。
だが、こうした熱狂は長く続かなかった。
翌年以降の巨人は成績が低迷し、王も年齢からの成績低下が顕著となって、1980年のオフには長嶋茂雄監督の退任に合わせるように現役を引退する。そうして藤田元司監督をはさんだ84年に、王は巨人の監督に就任した。
その後、5年間の監督成績はリーグ優勝1回にとどまり、王は88年のシーズン、まだ4試合を残したところで球団から解雇通知を受ける。表向きの理由は成績不振であったが、チームの成績は首位のドラゴンズに離されたとはいえリーグ2位で、相次ぐ主力の故障という明らかな理由もあった。
そのため「東京ドームの開場元年に優勝できなかったことで読売上層部の怒りを買った」「王と折り合いの悪かった江川卓が、懇意の日本テレビ幹部に王の悪口を言った」などと噂されたりもした。そして、ある球団幹部は「王では客が呼べない」と言い放った…。
王の退任会見は、まるで756号の熱狂などなかったかのように寂しいものだった。
ファンが喜んでくれる戦いを…
王自身の口からはその後もずっと、そしていまもなお巨人への文句が聞かれることはない。それでも、94年のオフにダイエー監督就任を決めたときの心境について、「退団の経緯から巨人監督復帰はない」と考えていたことを後年に語っており、なにがしかの確執があったには違いない。王の受難はダイエー監督になってからも続く。一向に成績は振るわず、96年5月には屈辱の「生卵事件」も起きた。
就任1年目は5位に終わり、迎えた2年目も最下位に低迷していたところ、試合終了後に王や選手たちを乗せたバスを怒ったファンが取り囲み、「サダハル辞めろ!」と生卵をぶつけたのだ。
王が監督に就任する前、南海時代から数えれば17年連続でBクラスだったチームなのだから、成績不振の責任を王に負わせるのはお門違いである。
それでも王は、「ああいう人たちが熱烈なファンなんだ。勝っても負けてもすぐに帰ってしまうような人たちより、厳しさを出してくれるのが本当のファンなんだ。あの人たちが喜んでくれるような戦いができるようなチームにしよう」と、むしろファンの心情に配慮してみせたのだった。
王のダイエー監督就任が決まる直前の94年秋、熱狂的な巨人ファンとして知られるテリー伊藤が、『王さんに抱かれたい』(飛鳥新社)という本を出している。
その内容は「ずっと長嶋信者としてジャイアンツを応援してきたけれど、王さんについては〝いい成績を残して当たり前〟といった感覚で、まったく感謝の気持ちが足りていなかった。そんな王さんに謝りたい」としたうえで、王の崇高な振る舞いを紹介するといったものだった。
きっとかつての巨人ファンには、同じように感じる人も少なくないだろう。
《文・脇本深八》
王貞治 PROFILE●1940年5月20日生まれ。東京都出身。シーズン通算本塁打868本を記録し、読売ジャイアンツのV9に貢献。現在は福岡ソフトバンクホークス取締役会長、プロ野球名球会顧問などを務める。
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