エンタメ

蝶野正洋『黒の履歴書』~“投資”から学ぶものとは

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

お笑い芸人を中心とした投資トラブルが、芸能界を巻き込む大きなスキャンダルとなっている。

現時点ではまだ事件の全容が見えてこないんだけど、この芸人は周りの後輩などからカネを集めて、FX投資家を名乗る男に1億円以上、さらに未公開の不動産を共同購入するという男に総額5億円以上も出資したという。どちらも儲かるどころか、実際に取引をしたのかどうかも怪しいレベルで、一部返金はあったものの、いまだに数億円が未回収となっているという。

「投資」と言ってるけど、この男たちはいわゆる無登録業者で、取引そのものがグレー。そういう意味では、この芸人も被害者と言えるかもしれないけど、乗せられてカネを出した周りの後輩芸人たちも欲の皮が突っ張っていたことは確かだね。

そもそも、よく分かってない事柄にカネを出すからダメなんだよ。本当にFXや不動産投資に興味があるなら、勉強して自分でカネを動かすはず。競馬場で近づいてきた怪しいオジサンに「俺は次のレース絶対当てるからカネ貸してくれ」って言われても出さないだろ? でもFXになると、その仕組みも儲け方も実はよく分かってないから、言われるままに出してしまう。

それとやっぱり、芸人側にもスキがあったんだろうね。カネはそこそこ持ってるけど、人気がいつまで続くか分からなくて、将来が不安。詐欺師は、こういう心理につけ込んでくる。

あえて興味のない態度を取る

立場的にはプロレスラーも、ちょっと似てるかもしれない。ケガでもしたら試合に出られなくなるから、仕事は常に不安定。でも、一発当ててやろうという野心は持っているから、さまざまな人が「おいしい話」を持って近づいてくる。

アントニオ猪木さんは事業欲が旺盛だったから、ちょっと怪しい話にも飛びついて、莫大なカネを突っ込んでいた。その影響を大いに受けていた橋本真也選手も、猪木さんを超えようとさまざまな事業に手を出して痛い目に遭っていたね。

俺に対しても、たまに儲け話を持ちかけてくる人がいるけど、そういう時はあえて興味なさそうな態度を取ることにしている。騙そうとする人間は、こちらの反応を常にうかがっている。だから逆にこいつはダメだなと思わせれば、サーッと離れていくんだよ。

とはいえ、まだ猪木さんが手掛けていたようなエネルギー事業は、成功の可能性は低くてもロマンがあった。それに比べて今回の芸人が手を出したFXは、ただのマネーゲームだからね。実態がないから、俺は好きじゃない。ビットコインとかの仮想通貨も同じようなニオイがする。

仕事で成功して財産を築いたらリタイアして、あとはその資金を投資しながら悠々自適に暮らす、というのが欧米型の老後スタイルなんだけど、日本でもそんな生き方に憧れる人が増えているという。

俺は逆に、ずっと働いているほうがいい。古い考えかもしれないけど、自分で汗水流して働いて得たカネで食うメシと、投資やギャンブルで儲けたあぶく銭で食うメシの味は違うんだよ。

イチかバチかで突っ込んで、一気に儲けたいという気持ちも分かる。でも、それはただのギャンブルでしかない。実話読者の方も怪しい儲け話には、くれぐれも気をつけてくれよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

あわせて読みたい