社会

北朝鮮“新型コロナに勝利”宣言も韓国に『致命的な報復処置』を示唆

Enrique Ramos
(画像)Enrique Ramos/Shutterstock

5月12日、ようやく新型コロナウイルスの感染者発生を認めた北朝鮮は、国家として「最大非常防疫体制」に突入。金正恩総書記もマスク姿を披露し、緊急事態であることを強調した。

それからわずか3カ月後の8月11日、朝鮮中央通信は前日10日に平壌で開かれた全国非常防疫総括会議で、正恩氏が新型コロナとの戦いに勝利したと宣言し、防疫体制の解除を命じたと報じた。

一方、正恩氏は国内でワクチン接種が1回も行われていないことを明言。感染再拡大の懸念もある中、早期に収束を宣言した背景には、外国との貿易を本格的に再開し、壊滅状態となった経済の立て直しを図るという狙いがある。

さらに、同会議では正恩氏の妹、金与正党副部長が演説で衝撃の事実を口にしたという。

「与正氏は〝防疫戦〟の最中、正恩氏が高熱で苦しんだと発言したのです。国民と同様に苦痛を経験したと主張する狙いとみられるが、新型コロナに感染していたのではないかとの観測も出た。この模様を放送した朝鮮中央テレビには、当局幹部たちが涙をぬぐう様子が映し出されました」(北朝鮮ウオッチャー)

高熱との闘い国民にアピール

韓国のメディア各社は、4月末に行われた軍創建90周年のパレードや関連行事以降、正恩氏の動静が1週間以上報じられなかったことが3回あり、その間に感染した可能性があると指摘した。

しかしながら、このコロナ勝利宣言には裏がある。

「先の演説で与正氏は、韓国の尹錫悦大統領が『対北朝鮮ビラ散布禁止法』の廃棄を検討していると非難しました。同法は与正氏が、文在寅前大統領を脅して成立させた経緯があり、要するに韓国から飛ばされたビラが感染拡大の原因だとして、難癖をつけたのです。与正氏は強い口調で『致命的な報復処置』まで示唆しました」(同)

かねてより北朝鮮には、〝偉大性宣伝〟なるものが存在する。最高指導者やその指導を受ける朝鮮労働党が、いかに〝偉大〟であるかを誇示する思想教育の一環で、国民を洗脳するために乱発されている。

与正氏が、「この防疫戦の日々、高熱の中でひどく苦しみながらも、人民たちのことを考えて一瞬も横になれなかった」と正恩氏を称賛したのは、国内向けのアピールと「将軍様を死に直面させた敵国韓国」という両面をにらんだ作戦なのだ。さて、致命的な報復とは何を指すのだろうか。

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