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『魔太郎が来る!!』 復讐だとしてもヤリ過ぎ…哀しき“封印漫画”の世界

『魔太郎が来る!!』1972-1975 藤子不二雄A/秋田書店

背が低く運動音痴で、天性の〝いじめられオーラ〟を持つ浦見魔太郎。しかし彼は、どうしても許せない理不尽な目に遭ったとき、不思議な魔術「うらみ念法」でいじめた相手に残虐な方法で復讐するのだ。

もともとは藤子不二雄がデビューする前に描いていた、いじめられっ子を救う謎のヒーロー漫画『怪太郎』がベースになっていたが、いじめられた当人が魔術で復讐するというスタイルになった時点で、完全にヒーロー漫画とは真逆の後ろめたいカタルシスが炸裂する作品となった。もちろん藤子漫画の定番、お父さんは〝ちょいメタボ〟、お母さんは〝ややホッソリ〟で描かれているのだが…。

復讐相手は社会復帰できない廃人状態に…

たとえば「うらみの2番 鉄のキバが引き裂いた夜」は、退治したいじめっ子の腰ぎんちゃくコンビに、ヒロインの前で下半身をさらされたため復讐を決意。ヒロインのニセ手紙で憎むべき2人を工事現場に呼び出すと、魔太郎はショベルカーで踏みつぶしコンクリートで固めて地中に埋めてしまう。はっきり言ってヤリ過ぎのオーバーキル状態である。

その他にも、ゴミ袋に詰めて執拗にバットで殴ってゴミ捨て場に放置するなど、ほとんどの相手を殺害または社会復帰ができない廃人に追い込んでいるのだ。

コミックスが版を重ねるごとに作品が消え、全133話のうち大幅に改稿された作品が34話、欠番扱いとなった作品が25話存在する。

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