企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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激安「ワケアリ食品」が大人気〜企業経済深層レポート

最近消費者の間では、激安の「ワケアリ食品」が大注目だ。「ワケアリ食品」とは一体どんなものなのか。スーパー関係者が言う。


「野菜でいえば曲がった物や傷物です。『不良品』と見なされ、スーパーの店頭に並ぶことはありません。同様に、賞味期限の切れた食品や期限切れ間際の商品も、即廃棄されていました」


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これらの「店頭までたどり着けない食品」や「期限切れボーダーライン食品」などが「ワケアリ食品」だ。フードアナリストが言う。


「『賞味期限』とはおいしく食べられる期間のことで、『消費期限』とは別物です。消費期限切れは食中毒の恐れがありますが、曲がったキュウリなら栄養面、衛生面ともに問題ありません」


なぜ今こうした「ワケアリ食品」が注目を集めているのか。背景についてフードライターが解説する。


「理由の1つは物価高です。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う原油価格の高騰や円安の影響で、エコノミストらによる2022年の家計負担増予測では、光熱費などが増えてトータルで年間6〜7万円アップする見込みです。食料品の値上がりも庶民を苦しめています」


帝国データバンクの調べでは、22年は約1万品目の値上げが予定されている。


「一方で給与はほぼ横ばい。経団連組合員企業で21年の月例賃金が約6000円増、22年もほぼ同様です。中小企業は給与アップもままならず、庶民の家計は火の車。少しでも安い食料品を、と向かった先が『ワケアリ食品』だったのです」(同)

食品ロス削減しSDGsに貢献

もう1つの理由がフード(食品)ロス問題だという。

「農林水産省によれば、まだ食べられるのに廃棄される『フードロス』は世界で年間13億トン。日本でも年間522万トンで、国民1人あたり茶碗1杯分のご飯を毎日廃棄している計算です。SDGsへの意識の高まりもあり、フードロス削減に貢献したい人が増えているのです」(同)


この2つの理由から「ワケアリ食品」に飛びついているというのだ。具体的にはどんな動きがあるのか。


マスコミで盛んに取り上げられているのが激安スーパー『マルヤス』だ。運営は合同会社ファンタイム(東京)。経営コンサルタントが語る。


「マルヤスは18年にオープンし、都内を中心に5店舗を展開。規模こそ小さいですが、食品ロス削減で温室効果ガス削減に寄与したとして、21年には環境大臣表彰も受けています。NHKのドキュメンタリー番組にも登場するなど、何かと話題です。割引率6〜7割は当たり前で、中には9割引の商品もあり、遠方の客も呼び込んでいます」


どれほど安いのか。例えば、バリ島で人気の健康ドリンク『ジャムウのウコン&タマリンド』。通常1380円が96%オフの49円という投げ売り価格。大手メーカーのカップ麺も、ネットの安売りでさえ200円以上する商品が、税込み150円前後で販売されている。


「ツイッターなどで告知され、その日に何が大安売りになるかは常連客にも分かりません。一般的なスーパーでは即廃棄の『箱つぶれ』や『ラベル損傷品』などは特に狙い目です。ディスカウントストア『ドン・キホーテ』同様、宝探しのような楽しみが人気の秘密です」(同)

「ワケあり食品」扱う企業が続々

日本最大級のフードロス削減を掲げたECサイトを運営するクラダシ(東京)も人気だ。クラダシは社会貢献型ショッピングサイト『Kuradashi』を展開する。多くの食品メーカーと提携し、通常の流通ルートでの販売が困難になった商品を買い取り、消費者には半額以下、最大97%安で提供する。その購入金額の一部は社会貢献活動団体への寄付もできる。この仕組みを利用すれば、メーカーのブランドイメージを毀損することもない。食品販売関係者が話す。

「創業から約7年、今では会員数が約35万人にも上り、来年末までには50万人を目標とする勢いです。特に40代から50代の女性利用者が増えていて、『ワケアリ食品』が相当浸透しています」


「ワケアリ食品」に進出するのは大都市企業ばかりではない。福井県の異業種、手紙代筆や眼鏡企画販売などで知られるエクネス(鯖江市)は、規格外野菜や果物を全国から集めて宅配する月額サービスを始めている。


「エクネスのサービスは『ロスヘル』と称し、全国の農家やJAなど約50の事業者から規格外の野菜や果物を仕入れて配送しています。価格も通常より3割程度安く設定されています」(地元商工関係者)


地方といえば、札幌市のアパレル企業が営むフードシェアリング『プラスフード』もユニークだ。札幌市の飲食店関係者が言う。


「月額1078円で、売れ残り食品を利用者が毎月10回まで無料で受け取れるサブスクサービスです。アプリの出品情報を見て注文し、店舗で受け取る。1回の食材は500円程度。10回利用すれば、1食あたり100円程度でゲットできると好評です」


札幌市の生ごみは年間約8万トンで、その2割は食べられるのに捨てられた食品廃棄物。この無駄を省き、格安食品を利用者に提供するシステムは今後大きく羽ばたけるか。


「ワケアリ食品」を扱う企業は今や乱立の気配すらあるのだ。