7月22日、フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長が、9月1日付で退任すると発表された。2025年秋まで任期が残っていることから、事実上の更迭という格好だ。
もっとも、ポルシェやアウディなどを傘下に収めるVWグループの業績は好調で、21年度の営業利益は192億ユーロ(約2兆7000億円)を叩き出しており、コロナ前の19年度の営業利益169億ユーロを上回っている。いったい何があったのだろうか。
「ディース氏はEV(電気自動車)シフトを積極的に推し進め、投資への備えやEV化に伴う部品減少を見越して、雇用削減を明言していた。そのため、従業員側からは目の敵にされており、実は解任寸前まで追い込まれたことが何度もありました」(自動車評論家)
100%完全EV化はない!?
しかし、VWは創業家であるポルシェ家とピエヒ家の影響力が大きく、彼らによってディース氏は守られてきた経緯があったという。
「その創業家から見放された背景には、今年2月にIPO(新規株式公開)を発表したポルシェの株価が、4分の1にまで下落したことがある。創業家は1日でも早く、不安要素のディース氏を取り除く必要があったのでしょう」(同)
振り返れば昨年はEV一辺倒で、エンジン車は過去の遺産になるといわれていたが、今年に入って一転、EVの非効率性や蓄電池の原料不足、充電施設の不足など問題が噴出した。
「ディース氏の更迭により、生産車種の100%EV化という可能性は消えました。そもそも今年5月、ポルシェとアウディが26年からのF1参戦を明らかにしたあたりから、VWはEV100%を諦めているといわれていました」(同)
どうやら自動車業界では、エンジン車をなくさないという路線が確定したようだ。
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