日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『キチヌ』東京都江東区/有明産~日本全国☆釣り行脚

猛暑を避けて、早朝に東京都江東区の有明でクロダイを狙った前回。朝の涼しいうちにアタリはあれど、本命のクロダイは不発。ギマが2尾釣れたところで、太陽がギラギラと勢いを増してきたことから竿を納めたのでありました。とはいえ、これは暑さからの一時避難。まだまだクロダイを諦めたわけではありません。とりあえず〝新交通ゆりかもめ〟に乗り、いったん、新橋駅に戻ります。


【関連】『ギマ』東京都江東区/有明産~日本全国☆釣り行脚 ほか

夏の盛りのクソ暑い日中、体力の衰えたオッサンにとって炎天下での釣りは非常に厳しいものです。幸い、今回のように都市部の釣り場では、付近に時間をつぶせる、涼しい場所が豊富にあるので助かります。ひとまず駅前にある〝ニュー新橋ビル〟に入ってひと休み。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

ここは、〝オッサンの聖地〟とも呼ばれる昭和ムード満点の複合商業施設ですから、時間つぶしにはもってこいです。全席喫煙可の喫茶店でのんびりと涼み、格安チケットショップを覗き、そしてゲームセンターで〝ドンキーコング〟や〝パックマン〟などに興じるうちに、夕方となり、そろそろ日も陰る頃だろうと、ビル内の釣具店でエサのアオイソメを買い、再び〝新交通ゆりかもめ〟にて釣り場へと向かいます。

小サイズはリリース

すっかり日が傾いた釣り場には早朝とは違う釣り人が3〜4人、ヘチ釣りやルアー釣りに興じており、広い遊歩道は相変わらず空いております。朝に満潮、そして新橋に避難をしていた昼間に干潮となった潮は、夜の満潮に向けて上げており、揺らめく水面からは潮が効いていることがうかがえます。「これは暗くなったらクロダイが出るかもなぁ…」などと期待を胸に仕掛けを結び、適当な位置から護岸の際と、その先のカケアガリを広く探っていくことにします。

日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

早朝に竿を出した感じでは、足下やそれに続く竿下までの水深が2メートルにも満たず浅めでした。ということは、警戒心の強いクロダイは日没後の夜間、エサを食いに上がってくることが予想されます。上げ潮に乗って、浅場に魚が入ってきていることを期待しながら探るうちに日は完全に沈み、お台場の観覧車の派手なイルミネーションが美しく輝き始めました。と、手元にコツッと小さなアタリが伝わり、そのまま待ってクンクンッと竿先が引き込まれてから竿を煽るとハリ掛かりです。早朝のギマよりも力強さを感じる鋭い手応えを楽しみながら抜き上げたのは、30センチ弱のキチヌ。嬉しい1尾ですが、ハリ掛かりも浅かったことから、「お母さんを連れてきてくれ」とリリース。というのも、キチヌやクロダイは雄性先熟ゆえ、大型はみな雌なんですな。


キチヌ (C)週刊実話Web

エサを付け替え、再び探り歩いて行くと、目の前に高速道路の太い橋脚が立つ箇所にさしかかりました。橋脚といえばクロダイ、スズキなどの一級ポイントですから、いやが上にも期待は高まります。

都会のキチヌに舌鼓

いったん仕掛けを上げて、竿先を橋脚に付け、スレスレにエサを落としていくと…ゴンッ! と重たいアタリに続いて、フワッと竿先の抵抗がなくなりました。食い上げのアタリです。落ちてくるエサを下から食ったのでしょう。すぐにリールを巻きながら合わせると、ズシンとした重量感が竿に乗りました。

先ほどのキチヌより、はるかに重々しい手応えに糸を出しつつ対応。激しく頭を振りながら走るタイ類らしい引きに、慎重な対処を心がけつつリールを巻きます。が、なかなか寄りません。激しい抵抗に糸を出しながら、巻いては出してを繰り返すうちに、やがて足下の水面に体高のある銀白の魚影が出ました。キチヌです。水面でひとしきり暴れさせ、ようやくおとなしくなった頃合いで玉網にイン。護岸に上げてメジャーを当てると45センチ。本命のクロダイではありませんが、これが1尾釣れれば十分満足と竿を畳むことにしました。


キチヌ (C)週刊実話Web

帰宅後は早速、刺身にして晩酌です。クロダイと比べて臭みがないことで、味には定評のあるキチヌ。都市部での獲物ながらに、適度な脂乗りが感じられる白身は、なかなかのお味です。本命はクロダイではありましたが、「食べることを考えれば、むしろキチヌでよかったのかも」などと都合のよいように考えつつ、冷えたビールをあおり、旨い刺身を完食。


キチヌの刺身 (C)週刊実話Web

暑い日中は冷房の効いたビルに避難をして、涼しい早朝と夜間にチョイと竿を出す。真面目な釣り師からは怒られてしまいそうなだらけた釣りでしたが、旨い肴にもありつけて、楽しい1日となりました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。