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やくみつる☆シネマ小言主義~『L.A.コールドケース』/8月5日(金)より全国公開

Ⓒ2018 Good Films Enterprises, LLC.

『L.A.コールドケース』
監督/ブラッド・ファーマン
出演/ジョニー・デップ、フォレスト・ウィテカー、トビー・ハス、デイトン・キャリー
配給/キノフィルムズ

90年代アメリカのヒップホップ界を代表する2大ラッパーが相次いで射殺されたという、実際にあった事件を題材にした映画です。

当時の大スターが2人も殺されて全米に衝撃を与えたのに、四半世紀経った今も未解決のまま。対立する所属レーベル同士の報復合戦が招いた悲劇とも噂され、今なおさまざまな臆測を巻き起こしているそうです。

この事件の背景に巨大な闇があると睨み、仕事も家族も失くしながら、たった1人で挑み続けていた実在の元刑事をジョニー・デップ。そして真相を報道しようとしたジャーナリストをアカデミー受賞俳優のフォレスト・ウィテカー。この2人を軸に、話は進みます。

ヒップホップのファンの方ならば周知の事件かもしれないのですが、なんせ自分には疎いジャンル。さらに陰謀論が背景にあるとなると、確実に頭がこんがらがる。そう予想した自分は本作を見る前にパンフレットを読み込み、話の流れと人物相関をしっかり頭に叩き込んで臨みました。

置き換えの“奥の手”で分かりやすく

しかし、関係する事件はラッパー殺人事件だけではありません。黒人警官が白人の麻薬捜査官に射殺される事件も絡んできます。しかも殺された伝説のラッパーの名前がノトーリアス・B.I.G.の他に、クリストファー・ウォレスやビギーといった別名も使われ、案の定、すぐに混乱し始めた自分は、映画を見ながら「奥の手」を使いました。

その「奥の手」とは、人物や所属団体などの「脳内変換」です。

まず、設定を日本に置き換えます。対立する団体を、ジャニーズ事務所VS吉本興業。殺された2大スターは、キムタクと明石家さんまさん。黒人警官はボビー・オロゴン。白人麻薬捜査官は、高橋克典。関東VS関西の巨大エンターテインメント会社の対決だと思ったらどうです? いきなり分かりやすくなりませんか。

ジョニー・デップが睨んだように、未解決事件のまま放置されているのはロサンゼルス市警察の組織全体の腐敗が関係しているというなら、ちょっとひんしゅく過ぎる例えですが安倍晋三元首相の銃殺事件。皆が謎に思った、1発目の発砲から致命傷を負わせた2発目までの数秒間、なぜ警護体制が機能しなかったのか。

もちろん、あり得ない話ですが、奈良県警の組織ぐるみの闇が関係しているとしたら…と「設定」するだけで、この映画の告発がいきなりヒリヒリと身近に感じてきます。

「奥の手」、意外に使えるんで、試しにやってみてください。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。

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