怪物のお目覚めだ。2年半ぶりに入場者の制限を撤廃した大相撲名古屋場所(ドルフィンズアリーナ)は7月24日の千秋楽、並走していた照ノ富士が貴景勝に敗れ、平幕の逸ノ城が初優勝した。
「終盤、コロナ陽性者をゴロゴロ出し、最終的に13部屋、けが人も含めて23人の関取が休場に追い込まれるなど異例の場所でした」(大相撲担当記者)
逸ノ城は幕内最重量の211キロ。幕下付け出しでデビューして5場所目には、新入幕ながら1横綱2大関を破って横綱白鵬と優勝争いを繰り広げ、怪物旋風を巻き起こした。
その後は重すぎる体重に押しつぶされて、腰痛や帯状疱疹などに苦しみ、低迷した。あれから8年。歴代9位のスロー優勝となる新入幕から47場所目でようやく賜杯を抱いた逸ノ城は、
「とてもうれしい。もう一番(優勝決定戦が)、あると思って支度部屋で心の準備をしていたけど、その前に決まってくれてよかった。(いつか)優勝できると思っていました。先場所、(コロナに罹って)休場したので、その分、頑張らないと、と思っていた。優勝できてよかった」
と、素直に心の内を明かした。
誰にも優勝のチャンスがある!?
秋場所(9月11日初日、両国国技館)は三役返り咲きが必至。遅ればせながら、若隆景や豊昇龍らが繰り広げている大関争いに参戦する。果たして、200キロ台の大関は誕生するのか。
「逸ノ城も優勝を手放しで喜んではいられない。優勝ラインが低すぎるんです。今年に入って毎場所、優勝力士が違うなど、大相撲界は戦国時代に突入し、優勝ラインは春、夏、そして、名古屋場所と3場所連続して12勝(3敗)止まり。これは昭和47年の初、春、夏場所に次いで15日制下では二度目です」(同)
低レベルの一番の理由は、横綱照ノ富士の取りこぼしが多いことにある。
「これだけ優勝ラインが下がってくると、誰にだって賜杯を手にするチャンスがある。逸ノ城も優勝に浮かれていると、すぐ取り残されてしまいます」(好角家)
怪物の正念場だ。
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