北朝鮮は原則的にミサイルの発射実験をした翌日、国営メディアを通じて兵器の情報や意義付けなどを公表してきた。
「3月24日、新型と主張する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した際には、上昇するミサイルをさまざまな角度から捉えた映像のほか、軍幹部と喜び合う金正恩総書記や感涙にむせぶ国民の姿などを、これ見よがしにテレビで放送していました」(軍事ライター)
ところが、5月4日のICBMとみられる発射実験以降は、詳細な写真や映像が一切公開されなくなった。ことさらに核・ミサイル開発の成果を誇示してきた北朝鮮は、なぜか不気味な沈黙を続けている。
「その理由は新型コロナウイルスの感染拡大に加え、腸チフスやコレラなど急性腸内性感染症のまん延で、平壌市民でさえ生活に余裕がなくなり、ミサイル発射に不満の声が出ているからです」(外交関係者)
もう過度なアピールは必要ない
5月12日になって、北朝鮮は初めて新型コロナの国内発生を公式発表。同日の夕方に短距離弾道ミサイル3発を発射したが、翌日の報道はなく、韓国政府の高官は「防疫に集中する姿を見せようとしているのでは」との見方を示した。
「北朝鮮の方針が変わった理由は他にもある。5月以降に行った発射実験は、韓国を狙った短距離ミサイルが多い。つまり、運用や配備のための実験へと移行しているので、過度なアピールは必要なくなったということです」(同)
北朝鮮の対外宣伝メディアは、韓国が6月21日に初の国産ロケット『ヌリ号』の打ち上げに成功したことについて、「韓国当局はヌリ号の開発に軍事的目的はないとしているが、長距離ミサイル開発のためではないか」と非難した。
北朝鮮は昨年10月21日、ヌリ号の1回目の打ち上げに際して、ダミー衛星を軌道に投入する目標を達成できなかったことから、韓国を「70年代の水準にも及ばない」と小馬鹿にしていた。その当時とは打って変わった警戒ぶりだ。
日米韓が安全保障面の連携を強化する中、今後さらなる北朝鮮の反発が予想される。
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