社会

自民党最大派閥“安倍派”分裂…食い止められるのは地元大人気の昭恵夫人だけ!?

安倍晋三元首相
銃撃前日の7月7日に兵庫県j西宮市で演説を行った際の安倍晋三元首相(C)週刊実話WEB

安倍晋三元首相が凶弾に倒れた事件は、国内外に大きな衝撃をもたらした。歴代総理在職日数ナンバーワンで国葬が執り行われる方針の実力者だけあって、地盤の選挙区(衆院山口4区)を引く継ぐ後継者はそういるものではない。安倍元首相には子供がいない。そんな中、後継者として昭恵夫人が急浮上、衆院山口4区補欠選挙出馬が取り沙汰されている。

まずは、昭恵夫人の後継候補の背景を安倍派議員が解説する。

「安倍さんが亡くなって、すぐ後継者の話をするのも忍びないんですが、これが憲政史上最長の首相を務め、なおかつ与党最大派閥のトップという大物政治家の宿命です。ご承知のように安倍夫妻の間にはお子さんがいないため、一般的な世襲とはいかないのも後継話を難しくしています」

安倍元首相の親族間で後継候補として挙げられているのは、安倍元首相の兄の長男、安倍元首相の弟で岸信介元首相をルーツに持つ岸家の養子に入った岸信夫防衛相の長男と次男、そして、昭恵夫人だ。

「3人の甥っ子の誰かを安倍元首相の養子にして、後継にする案は生前からありました。しかし、このうち2人は政治の世界にまったく興味がない。唯一、望みがあるのが岸防衛相の長男だが、岸防衛相の体調が今ひとつ芳しくない。そのため長男は信夫氏後継の可能性が高まっています」(同)

女性からの支持はバツグン

安倍元首相を取り巻く親族間の環境から、ガ然、注目されているのが〝アッキー〟の愛称でおなじみの昭恵夫人なわけだ。

「もともと、昭恵さんは人と接するのが好きな上に、安倍元首相と対立してでも自分の意見をハッキリ発信する。政治家向きの性格なのです」(後援会幹部)

例えば、東日本大震災後、国が総事業費1兆円をかけ400キロにわたって計画した巨大防潮堤について、昭恵夫人は『生態系を変え日本の景観も変えてしまう』と講演などで公に反対したことは広く知られている。また、医療用などに大麻を活用すべきという大胆な意見も展開した過去がある。

その一方で東京・内神田で山口県の地酒や食材を使った和食居酒屋を開いたり、あるいは大ファンというギタリストの布袋寅泰に酔った勢いで首筋にキスをしたりと、奔放な振る舞いも親近感を持たれている。

「安倍さんは長く首相や党要職などを務めたため、選挙の際はなかなか地元に張り付けない時代が続いた。そんな多忙な首相に代わり選挙区に張り付き、隅々まで回って支持を呼び掛けていたのが昭恵さんです。特に、昭恵さんは後援会の女性メンバーや女性の自民党支持者から絶大な人気を得ていた。その昭恵さんを政治の素人という声もあるが、安倍さんの意向を全面的に引き継ぐ弔い合戦となれば、無敵でしょう」(山口4区の後援会関係者)

後継者争いで「分裂の歴史」

亡き夫の弔い合戦で夫人が出馬した例としては、2009年に急死した中川昭一元財務相の妻・郁子氏がいる。郁子氏も政治とは無縁だったが、12年、衆院北海道11区から出馬し、当時の現職に1万6000票あまりの差をつけ初当選した。

「現状では、補選は来年4月が有力視されている。しかし、その間に解散・総選挙が行われる可能性もゼロではない。山口は1票の格差是正の関連で10増10減の対象。いずれ衆院議員は1人減る。もし、昭恵さんが補選で勝ち上がった場合、次の衆院選では林芳正外相と1議席を争うことになるかもしれない。それでもアッキー人気は地元では抜群なので、次期首相候補の林外相もうかうかしていられないだろう」(自民党議員)

昭恵夫人でくさびを打ち込む

一方で自民党最大派閥の安倍派(93人)では「昭恵夫人出馬は派閥分裂劇につながりかねない」と危惧する声もあり、混乱の度合いを深める因子を孕んでいる。

そもそも、安倍派は大所帯だけあって幹部連が群雄割拠している。会長代理には塩谷立・元総務会長と下村博文・前政調会長、事務総長は西村康稔・前経済再生担当相、そして、松野博一・官房長官、萩生田光一・経済産業相、福田達夫・総務会長、世耕弘成・参院幹事長らだ。

「安倍派=清和政策研究会といえば、節目での跡目争いで激しい政争と分裂を繰り返してきた。森喜朗元首相が『我が派は分裂と脱藩の歴史だ』と思わず漏らしたほど。91年、病に倒れた安倍氏の父・晋太郎会長の後継争いでは三塚博元幹事長と加藤六月元政調会長が激しく争った『三六戦争』が有名だ。まとめ役の安倍元首相が亡くなり、派内は混沌としている。そのため幹部らは激しい跡目争いを避ける知恵として塩谷、下村の両会長代理が会談し、当面は会長不在の集団指導体制維持で一致したばかり」(前出・安倍派議員)

政策集団としてトップ不在は弱体化を招く。昭恵夫人が政界進出すれば、まさにくさびを打つわけだ。

「安倍氏の右腕的存在の萩生田経産相や〝安倍チルドレン〟で無派閥の高市早苗政調会長は昭恵夫人が国政進出なら、全面支援の構えだ。彼らは安倍派の本家本元の神輿として昭恵夫人を担ぎ上げるはず。その意味では安倍氏の国葬もいい流れ。他の幹部連を一気に出し抜くことになる」(同)

歴史は繰り返す。

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