(画像)Master1305/Shutterstock
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7年ぶり節電要求で「ブラックアウト」の恐怖!電力不足の背景に3.11後の“構造的問題”

今年は観測史上最速の6月下旬に梅雨が明け、猛暑日が続いている。日中はオフィスや一般家庭で一斉にエアコンを使うため、電力不足が心配されている。そんな中、政府は7月1日から9月30日までの3カ月間、7年ぶりに全国で節電を要請した。


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いつから日本は電力が足りない国になってしまったのだろうか。直接的には3月16日に発生した福島県沖地震で、東北電力などの火力発電所が被害を受け、その復旧の遅れが原因とされるが、構造的問題は以前からずっと続いている。


2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所の事故以降、全国的に原発の廃炉が進み、政府は太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの拡大を進めてきた。しかし、太陽光による発電は増えたものの、それ以外はあまり増えなかった。


そして、太陽光が減る夕方以降や悪天候のとき、日照時間が短い冬場などは別の手段で発電する必要があり、その役割の多くを火力発電が担うようになった。


火力はLNG(液化天然ガス)や石油、石炭などを燃やして発電するので、発電量を調整しやすい。つまり、再生可能エネルギーの割合が増えるほど、そのバックアップとしての火力の必要性は高くなるのだ。


しかし、調整用に使われることが多くなった火力は稼働率が落ち、大手電力会社は効率の悪い老朽化した発電所を中心に、休止や廃止を急ぐようになった。毎年、大型火力2基から4基分が休廃止され、いざというときの発電能力が足りなくなったというわけだ。

原発再稼働も簡単ではない

さらに、ロシアのウクライナ侵攻などもあり、火力に使うLNGや原油価格が大きく上昇し、採算が悪化している。電力も今や自由競争の業界。大手電力が経営第一で動いても不思議ではない。

電力不足解消のために、原発再稼働の声も大きくなっているが、それには3つのハードルがある。まずは原子力規制委員会による新規制基準をクリアすること。福島原発事故後、日本は世界で一番厳しい安全基準を設けた。その次に原発が立地している地元自治体の合意を取る必要がある。地元の意思を無視して、原発再稼働はできない。そして、3つ目はテロ対策の「特定重大事故等対処施設(特重施設)」設置工事だ。ロシア軍によるウクライナの原発攻撃と占拠で、特重施設の重要性はますます高まった。


ただ、新潟県の柏崎刈羽原発では2020年3月以降、部外者の不正侵入を許す組織的な管理ミスが続き、行政処分を受けた。政府の審議委員を務めたエネルギー専門家によると、柏崎刈羽の再稼働は他の原発とは違った事情で見通せないという。


「政府はガバナンスが効いていない東京電力に、単独で原発再稼働させるのは難しいと考えている。複数の電力会社に共同で運営させたいようだ。しかし、東北電力などは東京電力と2社だけでの運営は避けたいらしい」


原子力規制委員会で初代委員長を務めた田中俊一氏は、『ブルームバーグ』のインタビューで、テロ対策設備が未完成の原発でも再稼働を可能とするよう自民党の議連や日本維新の会が求めていることについて、「たわ言」だと一蹴。政治家が今なすべきは、原発再稼働の必要性について国民の理解を得るように努めることで、規制委への介入は「大間違い」と述べた。


原発再稼働が難しい中、キャスターの辛坊治郎氏は、太陽光発電への移行が持論だ。15年前から自宅の屋根に巨大な太陽光パネルを設置して実証実験をしてきたと言い『東京スポーツ』の取材の中で「日本の全エネルギーは太陽光だけでまかなえる」とコメント。


その上で「原発に関しては、どんどん老朽化するばかりだから、あるやつは使え。そこで電力を確保している間に、原発の増設は無理だから、次の時代にどうするのかシフトしないといけない」と話した。

夏は越せても冬も危ない

太陽光を増やすにしても原発を再稼働するにしても、今夏の電力不足には間に合わない。当面は政府の節電要請に応えて、「エアコンの温度を28度に設定する」など、国民が地道に節電していくしかなさそうだ。

国民全員が節電要請を無視するとどうなるのか。資源エネルギー庁でエネルギー政策に携わってきたアナリストの石川和男氏は、「電力は供給できる量が決まっているが、それがオーバーしてしまうと、一斉にブラックアウト(大規模停電)が起こる」と危惧する。


2018年9月6日、北海道で最大震度7の地震が発生し、北海道エリア全域で日本初のブラックアウトが起きた。しかし、今や大規模な自然災害以外でも電力の需要と供給のバランスが崩れ、ブラックアウトに至る危険が高まっているのだ。


仮に今夏を乗り切っても、本当に深刻なのは冬が厳しい寒さになったときだ。夏同様、一斉にエアコンを使い始めるうえに、冬は太陽光発電には頼れない。ロシアが極東の石油・天然ガス開発事業『サハリン2』を一方的に接収すると宣言したために、今後、日本では火力発電の燃料不足に陥る可能性がある。


7月14日、岸田文雄首相は記者会見で、この冬は原発を最大9基稼働させる方針を示し、火力発電の供給能力も追加で10基を目指して確保するよう指示したと明らかにした。


立地自治体の理解を得られるよう、岸田首相がどこまで汗をかく覚悟があるのか、要注目だ。