エンジンタイプ駆け込み需要!? 好調販売スポーツカー〜企業経済深層レポート
スポーツカーの売れ行きが伸びているという。
ディーラー関係者が、こう解説する。
「ダイハツが2人乗り軽オープンスポーツカー『コペン』のデビュー20周年を記念して、1000台限定の特別仕様車を発売すると、予約開始からわずか4日で完売しました。もっとも『コペン』をスポーツカーと呼ぶことに異論がある人もいるでしょう。しかし、今夏発売予定のスポーツカー、日産の『フェアレディZ』の新型は、発売前から予約が殺到。とにかく今、若者を巻き込んでのスポーツカーブームが起きつつあるのは間違いないんです」
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では、スポーツカーブームを裏付ける具体的な数値を見てみよう。自動車販売会社関係者がこう解説する。
「日本が誇る2人乗り小型オープンスポーツカー『マツダ ロードスター』が好調です。今年1月から2つの特別仕様車、1つの新機種を発売。同時に全モデルにさらなる『人馬一体』の走りを高める新技術を導入しました。特に特別仕様車の『990S』は、従来の最軽量グレード『S』をベースにさらなるバネ下重量の低減を実現。価格も300万円弱に抑えました」
それらが功を奏し、今年1月の販売台数は1122台で前年比214.9%と倍増。ロードスターの販売台数が1000台を超えたのは約5年ぶりのことだ。
また5月末、長野県軽井沢町で行われたロードスターオーナーの集いでは、全国から1000台を超えるロードスターが集結し、異常な盛り上がりを見せたという。自動車関連WEB運営者がこう言う。
「集まった約2000人の中でも、今年は若い人の姿が目立ちました。スポーツカーに興味を抱く若者が増えているのは確実です」
リベンジ消費で購入額もアップ
ディーラー関係者が、昨今のスポーツカー事情について、こう解説する。「スポーツカーは80〜90年代、バブル景気とF1ブームで盛り上がりました。しかし、それ以降は家族大勢が乗れるミニバンが台頭。近年ではSUV(スポーツ用多目的車)ブームに押され、長らく冬の時代が続いていたのです」
それが今、なぜ再び急激に人気が回復しつつあるのか。消費行動に詳しい大学の准教授は、こう説明する。
「理由は2つあると思います。1つはコロナ禍が長く続く中、密を避けて移動できるクルマが再評価されたこと。同時に、長らく旅行やイベントなどが制限された結果によるリベンジ消費です。1人で自由に旅に出たい欲求とコロナ後の反動消費、そこにスポーツカーがピタリと当てはまったのです」
准教授の「コロナ反動消費」との指摘を、中古車販売関係者がこう裏付ける。
「クルマ情報誌『カーセンサー』によると、昨年の中古車の年代別購入額は30代が約180万円、20代が約160万円で、前年より20万円近くアップしています。リベンジ消費の表れですね。だから、やや高めのスポーツカーにも手が伸びたのでしょう」
再び准教授がこう言う。
「スポーツカーが伸びている2つ目の理由は、近年の自動車業界の大きな流れであるEV(電気自動車)化です。実際、世界屈指のスポーツカーと称される『ホンダNSX』を産み出したホンダは、今年限定で発売された『NSXタイプS』を最後に、ガソリン仕様のスポーツカーも手じまいの方向で進みつつあります。世界のEV化への大きな流れを受け、消費者はそれを敏感に受け止め、今のうちにガソリンスポーツカーを堪能したいと動く。そして、実際にスポーツカーを手に入れ乗ってみると、逆にその魅力に取りつかれるというパターンです」
ガソリンでも電気でも激化の未来
ところで、スポーツカーが必ずしもガソリン車でなければならないとは限らない。ある自動車メーカー関係者は言う。「一説には、マツダは次の5代目ロードスターでは『電動化』を取り入れたものを構想しているという情報も流れています。またホンダも、NSXの電動化タイプのスポーツカーを模索し始めたという話が飛び交っています」
スポーツカーを語る時、もう1つ忘れてはならないのは、トヨタ自動車の豊田章男社長の存在だ。豊田氏はレーシングドライバーでもあり、スポーツカーを愛してやまない。そんな豊田氏だけにスポーツカー開発には自然と力が入る。
「豊田社長は次々とスポーツカーの開発に力を入れヒットさせています。例えば、昨年SUBARUと共同開発した新型の『GR86(ハチロク)』。月間販売台数は700台が目安でしたが、その2倍で推移しています。また『ハチロク』以外に『GRスープラ』『GRヤリス』も絶好調。今秋には高性能かつハイパワーエンジンを搭載したスポーツカー『GRカローラRZ』を発売。さらに限定仕様として、2シートで軽量化するなど豊田社長自ら細部にこだわった『GRカローラ モリゾウエディション』も発売予定です」(同)
かくして各社の最新動向を見る限り、これまでのスポーツカー不遇の時代とは明らかに大きな違いを見せている。今後、EV化の波が押し寄せたとしても、スポーツカーの開発はさらに激化するかもしれない。
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