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下半期経済の行方~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

今年も下半期に突入した。まず簡単に上半期の経済を振り返っておくと、1〜3月期のGDP(国内総生産)は年率換算で▲0.5%のマイナス成長に陥った。

これは2月上旬に1日あたり10万人を超える新規感染者数を記録するほど、新型コロナウイルスの感染(第6波)が広がったことの影響が大きかったとみられる。一方、4〜6月はコロナの収束で観光需要が急回復するなど、経済は好調だった。

ただ、下半期を考えると、厳しい要因が相次いで浮かび上がる。

第一は、物価上昇だ。5月の消費者物価上昇率は、2.1%にとどまっているが、7月以降の物価上昇率は、さらに高まる可能性が高い。ガソリン価格は、政府の元売りへの補助金が上限に達したため、6月27日まで4週連続で高値を更新し、依然として高値が続いている。

東京電力管内の標準家庭における電気料金も8月には9118円と、前年に比べて2100円以上の値上げとなる。食料品も、7月以降10月まで、値上げ予定が相次いでいる。

さらに年内はアメリカの利上げが続くので、円安が一層進む可能性が高い。すでに7月からiPhoneが円安で大幅な値上げになっており、輸入品価格が上昇することは避けられない。また、異常気象によって、8月以降の農産物価格が大幅に上昇するリスクも高まっている。

第二は、所得の低迷だ。公的年金は6月給付分から0.4%引き下げられた。6月末に支給された国家公務員の夏のボーナスは、前年比11.5%減となった。民間のボーナスは、報道では好調とされているが、それは大企業だけの話である。毎月勤労統計の現金給与総額は、4月分までしか出ていないが、前年比1.3%増と、物価上昇率に遠く及んでいないのだ。

リーマンショック以上の嵐に

第三は、新型コロナ感染症の再拡大だ。国内の新規感染者数の週間平均は、6月20日の1万3989人がボトムで、7月4日には、2万2045人と、すでに58%も増えている。

これから感染力が高く、ワクチンなどで得た抗体が効きにくいとされる「BA.5」系統のウイルスが主流になること、3回目のワクチンの接種率が6割にとどまっていること、3回目接種の効果が減衰し始めていること、4回目接種の対象が60歳以上と基礎疾患を持つ人に限られていることなどを考えると、今後の爆発的感染拡大は避けられないとみられる。

このまま行くとちょうどお盆の時期に、第6波を超えるピークがやってくる可能性もある。それに対して、いまのところ政府は、病床がひっ迫しない限り、行動規制には出ない構えだ。だが、感染第6波のときのように1日10万人を超える感染者が出たら、傍観していられるかどうかは、不透明だ。少なくとも民間の「自主規制」によって、経済に急ブレーキがかかるのではないか。

また、年内に起こるかどうかは分からないが、アメリカの金利引き上げに伴ってバブルが崩壊する可能性は十分ある。そうなったら、リーマンショックのとき以上の嵐が吹き荒れることになるだろう。

さらに確率が高いとまでは言えないが、年内に首都直下地震が襲う可能性もある。政府は今後30年以内にマグニチュード7程度の巨大地震が発生する可能性が70%と予測しているが、それは1年間に2.3%の確率で起きるということだ。東日本大震災の直後、日経平均株価は8000円台まで下落した。悪いことは重なるものなのだ。

暗い話になって恐縮だが、残念ながら下半期の経済には、明るい要素がほとんど見当たらないのだ。

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