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蝶野正洋『黒の履歴書』~日本の少子化と『SDGs』

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

近頃の若者は「デート」をしないそうだ。内閣府の調査によると、20代男性の4割が「デート経験なし」で、さらに3人に2人は妻や恋人がいないという。

数年前から若い世代の「草食化」が叫ばれているけど、それが数字で裏付けされたようだ。

では20代女性はどういう状況かデータを見てみると、約半数に夫や恋人がおらず、25%がデート未経験だった。若干だけど女性はデート経験が多いわけで、ここを一部のモテ男か年上世代の男性がフォローしているということになる。

とはいえ、この結果は草食化というより今の若者が恋愛や結婚に焦っていないというのもあると思う。

ひと昔前までは70歳くらいが人生のゴールだと考えて、20代でデートして相手を見つけて結婚しようという流れがあったけど、今は80代、90代まで生きると考えると、結婚も30代、40代くらいでいい。長寿化と婚期の遅れは、連動してるんだよ。

あと原因の1つとして、若者の貧困化も挙げられている。そもそもデートするカネがないというわけだ。

でも、俺たちの若い頃もカネなんてなかった。だからデートといっても、そこら辺の川沿いを歩くだけとかね。ホテルに行くカネもないから公園に連れ込んだりしていた(笑)。今の若者は「デートはこういうもの」という意識が強いんじゃないかな。カネがないなら、カネがかからないデートをすればいいんだよ。

俺が若手レスラーの頃、アメリカのカンザスシティに海外遠征していたことがある。試合のギャラがわずかしか出ない日も多かったけど、そのとき俺はマルティーナと遠距離恋愛をしていて、なけなしのカネを集めて国際電話をかけたり、見かねたマルティーナが訪ねて来てくれたりしたことがある。ちゃんとしたデートをした覚えもないけど、あの頃は思い出深いね。

自動化や省力化で進む未来

結婚してからは経済力もついたので、いいメシを食ったり、一緒に旅行したり、好奇心があって行動力もあったときに夫婦で過ごすことができた。それから子供が生まれて、夫婦だけで出かけるなんてことはほとんどなくなったけどね(笑)。

若者の草食化やデート率の低さが話題になるのは、少子化問題につながっているからだ。日本の国力維持のために少子化を解消しようという意見も多いけど、俺はもうこれが自然な流れのように思える。

最近よく聞く「SDGs」という目標があるけど、食料や資源問題を解消して持続的な社会にするためには、これ以上地球の人口が増えないほうがいい。

人が少なくなったら社会が維持できなくなりそうだけど、自動化や省力化が進んできている。農業も工業化して、少人数でもやっていけるようになった。コンビニだってセルフレジになっているし、ファミリーレストランに行けば、ロボットウェイトレスがウロウロしている。人間が少なくても回していけるようなシステムがどんどん出来てるから、いまさら人口が増えても逆に人が余って、失業者だらけになるかもしれない。

日本は、人口バランス的にあと数十年は高齢者が多くて若者たちに負担がかかるけど、そこを抜けたら少数精鋭で動かしていく社会がくる。その頃のデート率はどうなってるだろうね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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