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北朝鮮・金正恩『食糧問題』に“不毛なキャンペーン”安直な考えに庶民は落胆…

(画像)Alexander Khitrov / Shutterstock.com

「貧すれば鈍する」ということか。昨年、北朝鮮の金正恩総書記は、極端な食肉不足を補うためにウサギの飼育に心血を注いだ。ウサギは「草を肉にできる魔法の家畜」というのが、その理由である。

朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』が〈トウモロコシの葉や干し草を粉砕して、そこにふすま(小麦の糠)などを混ぜて与えればウサギはよく育つ〉と、安価な飼育方法を紹介。

「青少年学生をウサギの飼育競争に駆り出し、各学校で年間3000万匹以上を飼育させました。しかし、現実には食べなれない肉であったことから、それほど食糧補てんにはなりませんでした」(北朝鮮事情に詳しい元大学教授)

経済難が続く北朝鮮では、食糧の備蓄が底をつく〝絶糧世帯〟が増加している。初夏は麦の収穫が始まる頃だが、降水量が例年の半分程度にとどまったことで、作況は目も当てられない有り様だという。

山菜や木の実を奨励

そんな中、北朝鮮当局はまたしても「野生植物資源を積極活用して、困難を乗りきろう」という大キャンペーンを始めた。

「野生植物資源とは、日本人も好むワラビ、ゼンマイなどの山菜や、クリ、サルナシなどの木の実などで、これらを積極的に食べるよう奨励しているのです。国土の大部分を占める山林を効果的に活用し、食糧問題を解決するとのことですが、〝山菜=タダ〟という、いつもながらの安直な考えにすぎません」(同)

実際、山菜や木の実さえもはや取り尽くされており、今さら山に入ってもこれらの植物資源にはお目にかかれないのが現状だ。

そもそも山菜を食べようにも、醤油や味噌などの調味料がない。北朝鮮では日本の「うま味調味料」が魔法の粉として重宝されているが、それも中朝国境の経済封鎖で入ってこない。

「そんな事情を知ってか知らずか、不毛なキャンペーンを展開する正恩氏の愚鈍ぶりに、庶民は落胆の色を隠せません」(北朝鮮ウオッチャー)

核実験や弾頭ミサイルの発射では、国民の空腹は満たされない。

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