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コロナ禍で増加のコインランドリー市場〜企業経済深層レポート

企業経済深層レポート
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

独身男女含めて洗濯機を持たない世帯はほぼゼロといえる時代にもかかわらず、なぜかコインランドリーの数が急増しているという。

洗濯機器業界の関係者が解説する。

「市場調査大手の矢野経済研究所によると、市場規模は2020年に1001億円と1000億円を突破し、22年の予測値も1016億円と好調です。店舗数にすると17年に2万店を突破し、今は2万5000店に達したとみられています」

伸びている背景について同関係者はこう指摘する。

「コインランドリー増加の要因は大きく3つあります。その筆頭は、家事に多くの時間を割けない共働き世帯の利用が増えていること。我々業界間では、一般家庭の洗濯に費やす時間は年間430時間以上とされており、これは大変な負担です。それがコインランドリーなら一度に大量の洗濯と乾燥ができ、大幅な時短につながる。その利便性が利用者増につながっているのです」

そして同関係者が挙げる2つ目の理由は、コインランドリー機器の進化だという。羽毛布団や毛布などの大型洗濯物が短時間、低価格で丸洗いできることだ。

「仮に羽毛布団1枚をクリーニングに出すと、仕上がりまで1週間以上、料金も5000円前後かかる。ところがコインランドリーなら1時間ほどで高くても1500円ほど。このコスパの高さで主婦層を中心に人気が高まっています」(同)

高い利益率も魅力

3つ目は、コロナ禍で衛生面を気遣う人が増えたことだ。コインランドリー運営企業関係者が強調する。

「以前は、誰が使ったか分からないコインランドリーを敬遠する人も多かったですが、今はそんな心配は無用です。現在の機器は利用前に槽の洗浄、リフレッシュ(送風運転)をし、清潔度は折り紙付きです。また、羽毛布団などは喘息やアトピー性皮膚炎の原因となるチリダニが布団1枚に20〜30万匹いるといわれ、天日干しでは死滅しないとされています。しかし、コインランドリーの大型高温乾燥機ならチリダニが100%死滅する。その点、自宅の洗濯機より数段衛生的という話さえあるのです」

これらの大きな3要因に加えて、コインランドリー増加には他の追い風も吹く。

もともと、コインランドリーは待ち時間の長さが悩みの種だった。ところが、最近はそれも解消されつつある。コインランドリー業界関係者が具体例を挙げる。

「コインランドリーに、カフェや喫茶コーナーなどを併設する施設が増えています。しかも、インスタントに毛が生えた程度のものではなく、本格コーヒーやオリジナルの凝った軽食などを提供し、利用者が待ち時間をくつろいで過ごせるようにしているのです」

そして、もう1つの追い風は、コインランドリーが生み出す利益率の高さだ。経営コンサルタントが言う。

「利益率の高さは、一部投資家間でも注目されています。全国展開する大手業者の例では、約25坪の中規模店の場合、初期投資の相場は機器購入や工事費で3500〜4000万円。月100万円の売り上げなら約10〜12年で投資額を回収でき、利回りは年10%前後といわれています」

こうした高い利益率に、異業種からも新規参入が相次ぐ。

新規参入は試行錯誤

例えば、ファミリーマート(東京)は併設型の『ファミマランドリー』を18年に始め、現在までに33店舗を全国展開する。商業コンサルタントが解説する。

「雨の日はコインランドリーの利用客が多く、逆にコンビニ客は減る傾向にあります。そこで双方の客を引き込む相乗効果を狙ってのものです」

石油元売り最大手のENEOSホールディングス(東京)も、20年から一部サービスステーションに『ENEOSランドリー』の出店を始めている。

「将来的な自動車のEV化などを見越し、新たな収益源の確保に乗り出したのです」(同)

現在の「1000億円のコインランドリー市場」は、今後どうなるのか。コインランドリー運営会社関係者はこう話す。

「ポイントは『布団の丸洗い』。現在は一部の羽毛布団などでそれが可能ですが、どんな大型布団でもOKとなるには少し時間が必要。一部の業者は、まもなくそれを可能にするといいます。この『布団の丸洗い』が完全にできれば、市場はさらに拡大し、4000〜5000億円市場になるともいわれています。それだけに、コンビニや石油業界以外からも続々と新規参入の動きがあります」

一方、近くに新店ができ、売り上げを喰い合うケースも出始めた。某コインランドリー経営者がこう話す。

「競争を勝ち抜くため、他店と差をつけるアイデアも必要です。例えば、ある店舗ではコロナ禍でタッチパネル型から非接触型の新機種に切り替えました。また、アトピー性皮膚炎を防ぎ環境にもよいとされる『洗剤不使用』の店も出現しています。しかし結局は、衛生面や清潔感に細心の注意を払いつつ、利用者の声を丹念に拾いながら運営する店舗が強いようです」

業界全体は右肩上がりといえども、個々各店となると生き残りに必死だ。

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