エンタメ

『ルポ 性暴力』著者:諸岡宏樹~話題の1冊☆著者インタビュー

『ルポ 性暴力』著者:諸岡宏樹/鉄人社

『ルポ 性暴力』鉄人社/1650円

諸岡宏樹(もろおか・ひろき)
1969年生まれ。三重県出身。ほとんどの週刊誌で執筆経験があるノンフィクションライター。別名義でマンガ原作多数。近著に『実録 怖い女の犯罪事件簿』(鉄人社刊)など。

――近年、性暴力犯罪が増加傾向にあります。背景には何があるのでしょうか?

諸岡 事件は増加傾向にありますが、立件されるのは相変わらず少ないです。内閣府の調査によれば、女性の15人に1人が「異性に無理矢理性交された経験」があるそうですが、そのうちの7割が誰にも打ち明けていません。知人に話すのが2割ほどで、残りの1割のうちの数%が警察に相談する。その中から強制性交等罪の構成要件である「暴行・脅迫要件」を満たすものとして、現実に起訴されるのは10件に1件といわれています。

――事件ではよく〝同意の有無〟が取り沙汰されます。明確な線引きはあるのでしょうか?

諸岡 これが難しい。性暴力の加害者の75%は顔見知りというデータもあるのですが、「不同意ではあるが、暴行・脅迫要件を満たしていない」と認定されると、法的には無罪になってしまう。

だから、加害者は被害者のささいな行動をあげつらって、ごねるわけです。逆に考えれば、女性から自分の部屋に誘った場合、それが望まない性行為だったとしても、強制性交や強制わいせつなどの犯罪として立件してもらうのは難しいということになります。

結局自分に返ってくる…

――強く印象に残っている事件はありますか?

諸岡 やはり不可抗力、抵抗できない状態で性暴力に遭う被害者は一番かわいそうだと思いますね。その最たるものが同じ屋根の下に住む親族からの性的虐待です。今でこそ「監護者性交等罪」がありますが、小4から高1まで義父に数え切れないほど強姦された女性の例や、叔父の子を妊娠し、小学校のトイレで破水した小6女児の例は、思い出すだけで鳥肌が立ちますね。

――事件の〝その後〟を追いかけていますね。

諸岡 犯罪者の人生を丸ごとレポートするという、考えられないような長期的なスパンの取材が可能になりました。

例えば23歳で捕まった男は、懲役12年の判決を受けて36歳で出所しましたが、半年もしないうちに再犯を起こし、今度は懲役20年の判決を受けています。次に出所するのは57歳ですが、その間に父親は自殺、母親は病死、弟は渡世の道に入り、妹は相続放棄して嫁いで離れてしまいました。身から出たサビですが、孤独しか待っていないわけです。

自分がしたことは結局、自分に返ってくるわけで、それなりの人生しか待っていません。性犯罪で人生を棒に振ることほど、つまらないことはありません。他山の石としてもらいたいですね。(聞き手/程原ケン)

あわせて読みたい